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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ケルト】

仲間を庇って、水の牢に閉じ込められた瞬間に死を悟った。
その後夢を見ていた気はするが、どんなものだったかは覚えていない。
けれど、そう。
とても暖かかったことだけは覚えている。

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白い世界。
どこを見ても白く、ただ自分の姿だけが上も下も無い世界に浮かんでいた。
ここは一体どこだと言うのか、全く検討がつかない。

「……なんでここにいるんだっけなぁ」

白の心地好さに身を預ける。
このまま眠ってしまいたいくらいに柔らかだ。
目蓋が重くて、つい身体を丸めてうとうとと目を閉じる。

『あら……こんなところで眠ってはダメですよ』
『良いじゃねぇか……疲れてるんだろうよ、そっとしてやんねぇ』
『もう、甘いのですから』

女と男の会話が聞こえる。
どちらもとても優しく柔らかい声色で、そして男の声にはどこか聞き覚えがあった。
どこでだっけと記憶を辿ろうとしても頭が働かず失敗に終わる。

ふわりとふたつの暖かさに包まれた。
声と姿を確かめようとしても、あまりに目蓋が重くて開くことができない。

『――はは、変わらねぇな』
『もうだっこもできない程に大きくなっていて少し寂しいですわ』
『だっこされる側だよお前は』
『まぁ酷いおひと』

くすくすけらけらと笑い声に包まれる。
とても、とても安心する声だ。
遠く遠い過去、この柔らかさの中で同じように眠っていた事がある気がする。

『……よく頑張ってきたな。俺はお前を誇りに思ってらぁ』
『もちろん私も……でも貴方がここに来るのはまだ少し早いですよ』

柔らかな暖かさが背を撫で、さらりと長い髪の毛が掛かったような感覚。
そしてごつごつとした指が髪を撫でる感触。
左右から、挟まれるように抱き締められていると気が付くのに少し掛かった。

『俺の子なら、もう少し頑張れるな?』
『貴方は強く優しい人。まだ向こうに守りたい人がいるのでしょう?』

それぞれが、耳元でそう囁く。
とても懐かしくて、優しくて、暖かい。

『その時が来たならば、私がお迎えに参ります。
 だからもう、二度と貴方からこちらに来てはいけませんよ』
『お前はやりたいことを全部やってから此方に来い。
 それまで父さん達は廻らず待っててやるから』

ああ、そうか。ここは。

『じゃあな、ケルト』
『次は紅茶を用意しておきますからね』

意識が遠のく。
けれど暖かさは確かに途切れることなく感じられて。

「――ありがとう」



俺はまだ、死んでなんかいられない。
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