英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
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「……買い物って、姉さんの?」
「うん? いいや」
姉さんに買い物に行くからついて来いと言われて、
着いた先はお洒落な洋服屋さん……だったのだけれど。
見渡す限り、シンプルな洋服や小物しか売っていない。
どう考えてもあたしの趣味と言うよりは姉さん向けのお店だ。
客層だって大人しそうな女の子ばかりで、派手な格好の私が浮いてしまうくらい。
少しいいところの、お嬢様が来るようなところであって、
姉さんならともかくあたしは目立って仕方が無かった。
「ふむ……」
「……姉さん、あたし入り口の方で待ってるよ?
あたしこういうの好きじゃないもん」
「そうか? まぁ仕方あるまい……5分で決めるゆえ待っておれ」
「はーい」
それから、本当にきっちり5分……よりは少し早かったが姉さんは戻って来た。
手に持った袋の大きさからして、買ったのは1着だけだろうか。
普段は倹約と言って自分の服はあまりかわないのに、
少し高いこういうところで買い物をするというのは結構珍しい。
「……結局それ、誰の?」
「お主のに決まっておろうが。ほれ、次に行くぞ」
「えー……って次はどこ?」
「行きつけに連れて行ってくれぬかスカッシュ」
微笑んで言われれば、そりゃ断れるはずも無くて。
今度は一転、肌を多く見せる服の並んだお店に移動する。
姉さんが一体何を考えているのかは分からなかったけど、でも。
「……騒がしいな」
「そういう子が集まるお店だもん……帰る?」
「いや……なぁ、我に合いそうな服はどこだろうか」
控えめに店内を見渡しながら、そんな言葉を落とした姉さんに固まる。
そして静かに額に手を当ててみた。
「――熱はないわね」
「たわけ、熱など無いわ」
「だって、姉さんがこの辺りの服欲しがるなんておかしいものー!」
「いいから案内せよ。お主のセンスで選んではくれないか?」
「うええ……やっぱり今日おかしいわよ姉さん……」
ぴしゃりと怒られたりしたものの、あれでもないこれでもないと洋服を選ぶ。
少しでも露出の無いものをと選べば、もう少し肌を出したいとか言って本当におかしい。
あんまりにうるさいから、あたしが普段着るものに近いものを提示してみた。
そうしたら、また笑ってこれがいいと言った。
まぁどうせ着ないんだろうな、とか思いながらも会計を済ませて外に出る。
今日も空は霞んでいるが、いい天気と言うべき青空。
「……着るの?」
「勿論だとも。たまに、だがな。
お主もせっかく買ってやったんだから一度くらいは着てくれよ?」
姉さんが選んでくれたのは、
真っ白なワンピースをベースに暖色のフリルがあしらわれたシンプルなもの。
対してあたしが選んだのは、
胸元が大きく開き、他の露出も多い寒色のブラウスとミニスカート。
なんというか、正反対だ。
「なんでまた……そりゃ、着るかもしれないけど」
「それならそれでいい。
――少し、やってみたいことがあってな」
「何?」
姉さんの“やってみたいこと”は確かに面白そうだった。
ちょっとした笑いを、最近根詰めているみんなに提供できそうな、そんな気がして。
「でもさぁ」
「うん?」
「それなら洋服交換するだけでよくない?」
「……我の服、お主は入らぬだろう?」
「そんなこと無いわよ」
「主に胸が」
「……あー、そう、ね……入っても服が伸びちゃうか」
ちょっとした悪戯を計画しながら、拠点へ帰る。
みんなを驚かせるために、姉さんと作戦を練りながら。
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1994/05/10