英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
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「……なんだと?」
『だからケルトが大怪我して、シェザにそっちへ運んでもらってる。
正直、黒がついてもおかしくない。
確か姫さんこっちが遠征に出てる間は帝都にいたはずだよな?
どんなに長くても10分以内には着くはずだ、病院に口利きを頼むよ』
遠征に出たはずのヤンディから疎通魔法が入った。
折り返してやれば、落ち着いた口調ではあるが焦りの混じる声が飛び込んできた。
恐らくは余程親しくなければ気が付けないような、そんな混乱さえも滲み出す。
いつでも冷静を保とうとするヤンディがここまで動揺するとなれば、これはただ事ではない。
『良いかい姫さん、病院に輸血はさせないでおくれよ。
ただでさえ稀な血液型だ、帝都に一致する奴がいるとは思えない』
「稀だと?」
そんな事は初耳だった。
いつだったか、本人が自分はO型だと言っていたはず。
それを伝えれば堪えきれなくなったのか微かに震えた声が届く。
『O型なんかじゃない。多分ボンベイ型だ。
あいつの母方の血筋には異様に多かったって聞いてる』
「だがあれは遺伝するとは限らぬぞ」
『もしボンベイ型じゃなかったら、親父さんがABだった以上あいつはAかB型だ。Oはあり得ない!!』
難しいのは承知の上、なんとか治療して貰えるようにしてほしいと言い残し魔法が切断される。
一気に血の気が引いていくのをどこかで感じた。
ヤンディがあそこまで焦り輸血のことまで言い出したからには、いよいよ命が危ないのだと理解する。
「あの……クムン様?」
「――すまぬ、寄付分は置いていく。取引は後日またにしてくれ……!」
制止の声を聞かずに薬剤局を飛び出す。
一体何があったと言うのか、それほどまでに強力な何かと出くわしてしまったのか。
思考が纏まらないままに正面ホールを目指す。
どうか、どうか。
周りが騒ぎすぎなんだと笑っていた、あの日のように。
「死ぬな、ケルト……!」
些細な怪我だけで済んでいますように。
ヤンディの焦りようから無いと分かっていても、そう祈ってしまう。
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女性
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1994/05/10