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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:クムン】

遥か遠い未来。
黄金の遊戯が終わった後、あるかもしれない確定でない時間。
※天狐さん(1x90)の皆様をお借りしております。

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外を見れば雪景色。何度冬が過ぎようと変わらぬ光景。
ふと、懐かしい書物が本棚から転げ落ちる。
それはかつて必死になって研究していた魔法の資料を纏めた研究書。

「まだ、残っておったか」

神格を与えられたこの身体は、この研究をしていた頃より時を止めてしまっている。
けれど、世界の時は間違いなく刻み続けられている。
それを自覚するのは実に容易い。

凛とした姉も騒がしい妹も、寛大な頭領も世界をまたに駆けた探検家も。
冬を百と少し数えた頃には皆旅立った。

「懐かしいものだ」

パラパラと頁を捲ると同時にこれを纏めていた頃が鮮明に甦ってくる。
喧嘩を眺めていたこと、
妹に口煩くしていたこと、
作った料理を美味しそうに食べてくれていたこと。

今や全てが思い出となり、同時に切なさが胸を満たす。
はらりと頁の間から一枚の紙が落ちる。
そっと拾い上げると思わず笑みがこぼれる。

「……もう、この姿は見れぬとばかり思うておったが」

"それ"は写真と呼ばれる記録用紙。
瞬間を記録し、永遠のものとするもの。
魔導科学と呼ばれる異世界の技術を妹が改造して楽しんでいたなと思いを馳せる。
確か、これもその産物。

一枚撮影した時点で、妹の魔力に耐えられず撮影器具は大破してしまったが。
かく言う自分も珍しくこれを複製しようと奮闘したものだ。
結果的にここに写っている七人分を一週間で仕上げた当時の自分を褒めたいほど。

写真の中の妹が迷惑そうな探検家と自分に絡んでいる。
それを頭領が酒樽片手に、後ろに立つ優しげな男と共に笑いながら眺め、
刀を差した青年と美しい宝石を首から提げた少年はそれぞれ探検家と自分に話しかけていた。

「まこと、あやつにしては気が利くものを遺していきよった」

普通の写真とやらは瞬間を記録し動くことは無いと言う。
けれど、この写真に写る人物は当時のまま動き続けていた。
しばらく眺めていれば、いい加減我慢の限界に達したのか
写真の中の自分が妹に魔法を放ち水浸しにした。
当時の妹らしく文句を飛ばす様子に探検家は呆れ、
頭領は腹を抱えて笑い、他の3人はどうしたものかとそれぞれ微妙な笑みを浮かべる。

当時のままの関係を写し出す写真のサイズに合わせ額を魔法で作り出す。
それに写真を入れて、机に飾った。

「今の今まで忘れていてすまなかったな。この先はもう忘れたりせぬ故許せ」

もう二度と会えない家族と友人達を眺めていると、ノックが耳に入る。

「誰だ?」
「おねえさま、おねえさま、マーラです。はいってよろしいですか」

幼い女の子の声が扉を通して聞こえる。
一言許可を出せば、そっと扉を開け先日五つを迎えたばかりの皇女が入ってくる。

「おねえさま、ごきげんよう」
「うむ、マーラも元気そうで何より」

幼くとも一国の姫。礼儀作法はしっかりとしている。
ドレスの裾を優雅に持ち上げ、一礼した少女にこちらも同じように返す。

「おねえさま、お母様がお探しになっていたの」
「ほう、アリアがか。珍しい事もあるものだな。よしマーラ。共に行こう」
「はい!!」

もう一度写真に視線を向け、小さく呟く。

「ケルト、ヤンディ、アイシェ。お主らが守り抜いたこの未来は、確かに続いておるぞ」
「おねえさま?」
「あぁ、今行こう」

ドレスを翻し、どこか姉や妹、自分の面影のある小さな未来と手を繋ぎ部屋を出た。
未来永劫、この国は三女神とその娘神である自分が守り抜いて見せると誓いながら。
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