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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【メイン:ケルト 視点:ヤンディ】

吹雪の日、女神の誓の拠点には緊張が走る。
いつだって寛大な頭領は、その時だけは存在しない。

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「……あーあ、こりゃ帰るに帰れないなぁ」

ぽつりと呟いた視線の先は数メートルさきも見えないほどの酷い吹雪。
ここ帝都から拠点に戻ろうにもこの吹雪では道を見失って迷いかねない。
……帰れる自信はあるのだが、死神がちょっかいを出してきたらと思うと進めない。

「……文句いわれるだろぅなぁ」

買い物袋をちらりと見てため息をつく。
おちびのコーヒーに、姫さんの紅茶に、ケルトの酒。
どれもこれも他国からの取り寄せ品。
よくもまぁ敵国に売ってくれたものだと感心する。
それに加えて、一番重要なのが夕飯の材料。
早く帰って作らないと、おちびがうるさい。

ケルトにでも意思疎通魔法を飛ばしてやろうかとまで考えたが、
原因が吹雪である以上また荒れている可能性を考えて断念。
思えば、今日やけに機嫌が悪かったのはこれの予兆だったのじゃないかと思う。
吹雪けば吹雪くほどあいつは荒れる。

「……どうやって連絡しよう」

おちびに飛ばしたところで、
疎通魔法をまともに扱えない彼女がこちらに掛け直してくれるとは思わない。
かといって姫さんに飛ばしても面倒くさがって反応はないだろう。
残された方法は自分の魔力で要件を伝えることなのだが。

「……駄目だな、どう考えてもおいらの身体が持たない」

ケルトなら一瞬飛ばしただけで察して折り返してくれるのだが……
こんな時は魔力が少ないことを恨んでしまう。

何度目かわからない深いため息をついて、適当な店で吹雪が止むのを待つことにした。
結局、動けるようになったのは日も沈んだ後だった。

よっぽどおちびが騒いだのか
ケルトが手をつけられなくなったのか、姫さんが一度連絡を寄越していた。
吹雪が弱まったら帰ると伝えたものの、
明らかに声が疲れているのが少し気になり早めに帰路についた。
彼女ならばなんとかしてるだろうと考えて。

「ただいまぁ」
「……遅い」
「……予感的中とみた」

拠点に戻るなり机に突っ伏している姫さんを見て苦笑する。
荷物を台所に持っていくついでに、すっかり冷めてしまっている紅茶のセットも手にとる。
食料は食料庫に放り込み、コーヒー豆と紅茶の茶葉は所定の場所に。
水を火に掛けて、紅茶を淹れ直す。

「はい、姫さんお疲れぇ」
「……うむ」

一口紅茶を含むと香りが広がり、冷えきった身体が暖まる。
姫さんも紅茶に口をつけたところで、今日の惨状の原因を聞く。

「ケルトとおちびは?」
「スカッシュはあまりにうるさくて部屋に閉じ込めた。
 ケルトは無理やり魔法を掛け眠らせた」
「……よっぽど酷かったんだねぇ」
「酷いどころでないわ」

隠そうともしない苛立ちっぷりに、2人とも容赦無かったんだろうと想像する。
考えるに、おちびはおちびなりに手伝おうとしたのだがお節介にしかならず、
部屋で1人反省会を開いているだろうと予想する。
そうでなければ部屋の施錠魔法を解いて今もここで駆け回っているであろうから。

「……どこまで荒れてた?」
「いつも以上だな。
 剣を取り上げるのも部屋に閉じ込めるのも苦労した。
 最終的には見ても居られなくなってな」
「お疲れ様、ごめんよぅ前兆はあったんだし買い出しなんか行くんじゃなかった」
「……いや、頼んだのはこちらだ。気にするでない」
「怪我、してないかぃ?」
「なに、もう治した」

手際のよさについ苦笑を浮かべ、また紅茶を一口。
いつもなら自分が剣を取り上げて
押さえつけているうちに、おちびが部屋に施錠魔法を掛ける。
その後は荒れに荒れるケルトに落ち着くまで、一対一で付き合う。
瓶や樽が飛んでくるのは毎度の事、
剣を隠しきれなかったり取り上げるのに失敗すれば相応の危険が伴う。

「……疲れただろ、あいつに付き合うの。後はおいらがやるし、休んだら?」
「うむ……そうだな、そうさせてもらおう」

スッと立ち上がり部屋に戻る姫さんを見送る。
紅茶を飲み干して、2つのカップを片付けながら考える。

「明日、なんて誤魔化してやればいいかなぁ」

きっとまたあいつは傷付いてしまうから。
吹雪くと、あいつはあの当時に戻ってしまう。
それを酷く気にしているから。

少しでもそれを和らげてやるにはどんな言葉を掛けてやれば良いんだろう。
いつもなら側に居て弱音を全部受け止めてやるのに、今回はできなかったから。

「……朝までに考えよう。そもそも落ち着いてれば良いけど……」

魔法で眠らされたなら、最悪"あの頃"のままである可能性は残っている。
……もし、そうなればケルトが起き出す前に行動を起こさなければまずい。

「危険物だけ回収しとくかぁ」

出る時に手を叩くと部屋の明かりがすべて消える。
廊下をまっすぐ進み、突き当たりの扉をそっと開け、中に入る。

……と同時に強い睡魔が襲い来る。
一瞬よろけて倒れそうになるがすぐに持ち直す。
原因は分かりきっている。これは姫さんの魔法の結果なのだろう。

「部屋ごと催眠魔法か……よっぽどだったんだなこいつ」

部屋の真ん中で魔法による強制睡眠に陥っているケルトをベッドまで運ぶ。
涙の後が残る顔と、堅いものにぶつけたのか頭から血が流れた跡。
その上、割ったビンで切ったと思われる傷があちこちに出来ている。
そっとベッドにケルトを横たえて、枕元に腰掛ける。

「……さぁて、"影"のお仕事でも始めますか」

懐から聖印を取り出し、右手で眠り続けるケルトに向け掲げる。
左手で女神を象徴する印を描き、ケルトの額に触れた。
そして、誰にも聞こえないような小さな声で何かを唱える。
それに答えるかのように聖印が淡い光を放ち、ケルトの傷が跡形もなくなっていく。

全ての傷が無くなったと判断すると聖印を懐にしまい、
頭から流れて来た赤い液体を軽く拭って立ち上がる。
……全身に痛みが走ったのも気にせず、眠ったままのケルトに話しかける。

「ちょっと部屋弄るけど勘弁な」

届いていないのは分かっていながらも、一応断りをいれ部屋の片付けを始める。
壁や床に叩き付けられた酒瓶とグラス、木屑に変わり果てた小さな樽を一つ一つ。
一通り片付け終え、武器になり得そうなものや身体を傷つけそうな物を抱える。

「おやすみケルト。明日は晴れるといいねぇ。
 ……せめて、夢だけでもいいものでありますように」

一声投げかけ、部屋を出る。
気休めにしかならないと分かっていても、扉には施錠魔法を掛けておく。
抱えたものを落とさないように気をつけながら自分の部屋に戻った。
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