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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ヤンディ】

死神がついに動き出した。この魂を、喰らうべく。
――自分も、彼も。もう長くはない。
※天狐さん(1x90)のテンコさんをお借りしております。

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+ + + + + + + + + +
何も見えない空を見上げた。
目を閉じれば、霞んだ星空が見えた。
もう一度目を開けて、星を探してもこの目に星の光が映ることはなかった。

「ヤンディ、何見とるん?」
「空」
「や、それはわかるんやけど……今日は天気いいなぁ」
「そうだねぇ。"太陽がまぶしい"くらいだ」

そう、見えるわけがなかった。
辺りが暗いんじゃない。 この目が、何も映していないだけ。
最近やっと、その事実に気が付いた。
そんな重要なことに気がつけない程に、精神はぼろぼろだった。

近くの、木だと思われる場所までまっすぐ歩いていく。
感覚を研ぎ澄まし、隣にいる彼に感づかれないよう。

「ちょっと、休憩しようか?」
「ん、別にええよ」

目は見えなくとも、感覚は鋭くなっていた。
無機物でも、大きいものならば存在を知り避けられる。
そんな事を考えていたら、手を引かれた。

「はよいこか?」
「……うん」

気づかれているのかもしれない。
こうして、足場の悪いところで手を引かれることが増えた。

けれど、それはお互い様だと思う。
前を歩いているであろう親友から感じられる鉄の香りは、薄められてはいるがよくわかる。
気が付かない振りをすると決めたのは自分だけれど。

もし、自分に彼を救うだけの力があれば。
もし、自分にケルト並の優しさがあれば。
もし、自分の体調も悪くなければ。

今すぐにでも、叱ってやりたいのに。
無理をしないで欲しい。 休んで欲しい。
大丈夫なように振舞うのではなく、頼って欲しい。
……けれど、似たような状況に自分も陥っているから何も言えない。

ただ、願うしかない。
自分達が顔を会わせるのがこれで最期ではない事を。
お互い避けられない運命ならば、その時が遥か未来にあることを。

「ヤンディ?」
「……ねぇ、今度。この戦争が終わったら。みんなで星でも見に行かないかい?」
「星?」
「うん、おいらね。綺麗な星空が見たい。故郷みたいに、綺麗な星を見たい。
 ……もう一度だけでいいんだ。あの夜空を見たい。」

無理なのは、十分に承知している。
英雄戦と呼ばれるあの戦いがどう転ぶかはわからないけれど。
どちらにしろ、自分はその結果を知ることは無いだろう。
辛うじて、意識が残っている"かも"しれないがその希望は非常に薄い。

「……そりゃええわ。絶対行こうな!」

隣で、彼が笑った気がする。
それを確かめる術は自分には無いけれど。

せめて、この子を安心させてあげたい。
笑えているか少し不安だけれど、彼の方へ笑いかける。

「うん、きっとだからね」

耳元で死神が嘲笑う。
お前にそんな時間はやらないと。

ならば、足掻いてみせよう。
この結末を紫苑竜が夢見ていないことを祈りながら、抗ってみせよう。

探し出してみよう、その時間を迎えるための道を。
探検家が、冒険家が……探求することを辞めてしまったら何も残らないだろぅ?
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