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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:クムン】

その瞳は光を失い、その衰弱は目に見える。
三女神よ、確かに彼は罪深い。
けれど、これほどまでの仕打ちを受けなければならないほどに重い罪なのですか?

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日に日に、大丈夫だという言の葉が増えていった。
ケルトは感付いているのだろう。
スカッシュもまた、倒れる回数が増えたことを心配していた。

……2人とも、あやつに直接は何も言いはしないだろう。
それが、あの2人とあやつの距離の取り方だった。
親しいが故に、近しいが故に踏み込ませてはくれぬ領域が、あやつにはあるのだ。

「……お主はまたここにおったか」
「……」

ならば、我が踏み込んで見せるまで。
例え、今まで以上に距離を取られたとして困ることなど何もない。
元より、大して仲が良いわけでも無いのだから悪化しようとも特に問題は無いのだ。

「星は見えるか?」
「……へ?あれ、姫さんいつから?」
「……気付いておらんかっただけか。 星は見えるか、と問うたのだ」
「んー、見えないねぇ。月も出てないみたいだ」

夜空を見上げてみれば、帝国らしい月と星が確かに浮かんでいた。
……あぁ、遂にこやつは月の光まで認識出来ぬようになってしまったか。

「姫さんには見えてるんだろぅ。
 酷いじゃないか、この前教えてくれてたらもっと早く気付けてたのにぃ」
「お主があまりに真剣だったのでつい、な」

悲壮感を感じさせないように、明るく振る舞っているのがよくわかる。
その体調も、決して良いものでは無いだろうに。

「……その後、体調はどうだ?」
「大丈夫さぁ」
「嘘だな」
「嘘だよ」
「正直に言え」
「わかったよ、姫さんには敵わないし。
……けど、そっちの状態も教えておくれ。 例え見えてなくても、わかってるから」
「ふふ……隣空けてくれ、防音壁を張る」
「遮蔽壁の方が嬉しいんだけどな」
「そうか?」

窓を軽く越えて、ヤンディの隣で横になる。
天に人差し指で呪字を刻んでゆく。それは我らを囲むように広がった。

「"我らを遮蔽せよ、我らを隠蔽せよ、言の葉もその存在も"」

柔らかな水の音が響いて、肌を刺すような寒さが和らいでゆく。
周辺とは切り離された空間の完成だ。
外から内を伺うことは絶対にできぬ、一種の結界術。

「それで、どうなのだ?」
「……とりあえず目は完全に見えてないし、少しずつ感覚も鈍くなってる。
 最終的に呑まれるか壊れるかはわからないけど……」
「……お主はいつまで戦場に立つ気だ?」
「死ぬか呑まれるか壊れるまで」
「それはいつだ」
「……長くても、あと3ヵ月くらいかな。凄いと思ってるんだおいら自身。
 だって、この戦争が決着するまで正気でいられると思ってなかった」

あぁ、女神よ。何故この者は、受け入れがたい災厄を
さも当然のように受け入れているのでしょう。

何故その身に死が迫っているというのに、
その身の能力を失っているというのに、決して取り乱そうとしないのでしょう。

「でもちょっと癪なんだよねぇ、このまま全部持っていかれるのは。
 まぁ、ここまで延ばせたのは足掻いてみた結果だろうからこれ以上は望まないよ」

何故、この男は生きることに執着しないのでしょう。
何故、生きることを諦めてしまうのでしょう。

「だって、おいら凄く頑張ったと思わないかぃ?
 あのまま、元の世界にいたらきっと一年もしないで壊れてたぞきっと。
 それが、巻き戻りを計算にいれるともう7年?8年くらいこうして生きてるんだ。
 ちょっと心残りはあるけど、この世界で朽ちるなら何の文句もないよ。
 ――姫さん? 黙ってないでくれよわからないから。そこにいるんだろぅ?」

女神よ、三女神よ。 貴女方は一体、彼の何が憎いのですか。
何故、このような残酷な試練をお与えになるのですか。

愛を知った途端に引き裂き、友を知った途端に死を与える。
貴女方は一体……彼にどれ程の苦痛をお与えになるおつもりなのですか……?

「――さん、姫さん。……クムンったら!!」
「あ、ああすまん」
「全く、黙られたら君がそこにいるのかもわからな……泣いてるのかぃ?」

ゆっくりと、伸ばされた手は顔のすぐ上の空気を撫でる。
その手を右手でそっと包み、左手で涙を払う。

あぁ、この人は。
この人は、自分の置かれた状況に文句を言いながらも。
例え周りに邪険にされても、結局は周りばかりを見てしまうような。

「お主は……実に、愚かな男だ」

声が震えているのが自分でもわかってしまう。
いつもの様には、誤魔化す事ができないと悟る。
ならば、誤魔化す事を辞めてしまおう。
目の前の男が死んだとして、涙を流せないほどに心は凍り付いていないのだから。

嫌われてもいい。いっそ、嫌ってくれ。
お主が苦しむ原因を、お主を迫害させる国を作ったのは他でもない我ら皇族なのだから。

「姫さん、泣かないでおくれよ。 ケルトに、どやされるじゃないか」
「お主など、叱られてしまえ。生を諦めるなど、許さぬ」

拭えども拭えども、涙が溢れゆく。
ヤンディが緩く身体を起こして、拭いきれぬ涙を払う。

「うーん、許されなくても死神は容赦しないからねぇ。
 ……で、そっちの体調はどうなんだぃ?」
「我の、体調などよいわ……っ!」
「よくない。君が泣くなんて、よっぽど悪いんじゃないのかい」

そうやって、すぐに人の心配をする。
どうせならば、自分の心配をしてほしいというのに。

「我は、魔法さえ使わなければすぐに回復する。 お主ほどの状況にはおらぬ故心配無用だ」
「……魔法使わないですむのかい?」
「お主が戦場で傷付きさえしなければな。前に出すぎなのだ」
「もう、距離感わからないし難しい要求だなぁ」

ころんとまた仰向けになるのを横目に捉える。
その瞳がどこに向けられているのかはわからないけれど。

「星が見たいなぁ」
「……見えると、よいな」
「えーっ、幻光掛けておくれよ」
「あれは禁呪だ」
「え、許されてるだろあれ」
「レアル様は禁じていらっしゃる。
 そも、今のお主にはとてもじゃないが怖くて掛けられるか。
 どうしても見たければケルトに白状して掛けてもらえ」
「うう……拠点から出れなくなる気しかしないぞぅ。 意思改編されかねないよ、本気で」
「いっそされてしまえ」
「姫さん酷いなぁ」

女神よ、三女神よ。
どうかこの魂に祝福を。
この命に救いの光を。

どうか、どうか。妹の"兄"とも呼ぶべきこの男を。
妹を守り慈しむこの我が"兄"に、最上の守護をお与えください。
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