英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
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珍しく、拠点には俺しかいなかった。
姫は研究資料を集めに、スカッシュちゃんはいつも通り酒場へ。
朝の時点で姿の無かったヤンディも恐らくは久々に探検に出ているのだろう。
一方、留守番の俺はただただベッドに横たわっていた。
「――頭いてぇ」
ついさっきまでは何とも無かった。
発作的に激しい痛みを主張するそれは、強烈な吐き気をも誘発する。
……とはいえ、朝から何も口にしていないので出せるものなどないのだが。
とにかく収まるのを待つしか無かった。
魔法をできる限り使わない生活を送っているのだが、
その僅かな魔法でさえ精神についた傷を広げているらしい。
「……疎通魔法使うの止めりゃ良いんだろうがなぁ」
一番の原因は確実に、遠征時に繰り出す疎通魔法を乗せた剣技。
そろそろ、更に高度な魔法を乗せなければまともに戦えなくなってくるだろう。
今現在でさえ、敵の精神を削り切れずに思わぬ反撃をくらう事が多くなって来ているのだから、
相手の動きを封じ込む妨害の魔法を乗せる事を視野に入れなくてはならない。
けれどそれはつまり、余計に精神を酷使するということに他ならないのだが……
「――っ」
込み上げてきた酸の感覚に、身体を丸めて耐える。
医者になぞ見せてはいないが、恐らくこの喉は焼けているだろう。
息が止まり、無理やり唾を飲み込んで中和を試みる。
「――っ、はぁ」
脂汗が額に滲む。
喉が異様に渇き、爛れているが近くにアルコールの入っていない飲み物などない。
軽くベッドを指で弾き、現れた水をゆっくりと口に含みうがいをして、
水と同時に呼び出していた桶に吐き出す。
飲み干してしまいたいところだが、そんなことをしてもすぐに戻してしまうのは明白であった。
未だ残る酸が、じわじわと喉を焼き続けているのがわかる。
こうなれば、誰かが帰ってくる前に収まるのを待つしかない。
今は日が天に輝く昼時。一番早く帰ってくるのは恐らく姫。
いざとなれば、余計に酷くなるのを覚悟して魔法で緩和するしかないだろう。
ヤンディが復帰したばかりの今、俺が倒れたらまずい。
俺が倒れたら、姫の負担が更に増えるだろう。
姫の体調も良くない以上、それは避けなければならない。
「今気張らねぇでいつ気張るよ俺」
遠くで、玄関が開く音が聞こえた。
――さて、空元気を出す時間だ。
重い身体に鞭を打ち、浅くはない精神の傷に構わず魔法を発動させる。
桶をベッドの下に隠し、床に胡座を掻いて近くの酒瓶を開けた。
そして響いたノックにいつも通りの声で答える。
「開いてるぜー」
「昼食を買ってきたぞ、談話室に来い」
「わかった、すぐ行く」
笑顔で答えて、僅かに軽くなった身体で談話室に向かう。
午後はどこか人気の無い場所に行かなければと考えながら。
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女性
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1994/05/10