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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【メイン:スカッシュ 視点:ヤンディ】

4人が始めて出合った、その日。
あの日もそう、酷い吹雪だった。

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吹雪の中、2人の女の子を連れてケルトが帰ってきた。
自分と同い年くらいの女の子はケルトの背に、
雪を被った小さな女の子はしっかりとケルトの服を握り締め。
元々は上流階級にいたと思われるその服はあちこちが破れ汚れ、
魔法狩りから逃げてきたのだと思い知らされる。

「……死にに行ったかと思えば、死にかけを拾ってきたのかぃ」
「うるせぇやい」
「そんな連中、放っておきゃいいのに」

その言葉に、小さい方がびくりと身体を震わせる。
一睨みしてやれば、ケルトの後ろに隠れてしまった。

「そうもいかねぇだろ。女神の誓(ここ)を探してたって言うんだ」
「食料も水も無いのに良く言うよ、これ以上は無理だ」
「俺の分をくれてやるよ。
 おい! 誰か女は来てないか!? この子を看てやってくれ!!」

横を歩いていくケルトの背で眠る顔に、ドキリとする。
つい先日、流行り病で死んだとされる第二皇女と瓜二つであったから。
ケルトが気が付かない筈がない。
もうずっと皇族の追っかけをやってたこいつが間違える筈がない。
置いていかれまいと必死に後を付いていく小さな子を捕まえる。

「……な、なんですか」

消え入りそうな、か細い声に確信を得る。
――間違いなくこの2人はリュンア姫とアイシェ姫だと。
ケルトの姿が見えなくなったところで、小さく問い掛ける。

「こんな賎しい盗賊の吹き溜まりに何のご用ですか"アイシェ姫"」
「わ、私は、に、偽物ですから。み、身代わり、で、そ、その……」

あぁ、ケルトはそれで納得したのかと思い当たる。
写し身の被害者だと判断したのかと。
けど、嘘が甘い。

「……写し身は自分から偽物だと言えないように呪われている筈だ」
「はう……それは、そ、その、お姫様、死んじゃっ……から」
「呪いは永久に解けたりしない」
「な、なんで、し、って」
「呪いという呪いは全部調べ上げた事があってね。口縫いから、皇家秘伝まで」

唖然として、恐怖が幼い顔に宿る。
ただまぁ、どうとする気も無いから怯えられても困るだけだ。

「……私達を、お城に突き出しますか」
「……なんでだい、君達は命からがら逃げてきたお姫様の身代わりだろ」
「え……」
「初めまして、スカッシュちゃん。お姫様の名前を貰った末妹神の躍り子さん。
 女神の誓にようこそ。おいらは女神の誓、頭領代理のヤンディだ」
「とー……りょー? さっきのお兄さんも頭領だって……」

思わず、顔をしかめてしまった。
あぁ、ついにここにも自分の居場所が無くなってしまうのかと。
あいつが頭領であることを嫌がったからこそ、自分はここに居られたのに。
あいつが頭領になると決めたなら、もう、用済み。

「……お兄さん?」

不安そうに見上げる少女を、手に入れたくなった。
この子は、まだ自分の事を何も知らない。
悪魔の子であることも、死神憑きであることも。

「……決めた」
「?」
「君、今日からおいらの子分ね」
「……!?」
「だって、盗賊団に入るからには仕事もきちんとやってもらわなきゃ。
 盗みの技術、1から叩き込んでやる」

今、ここで囲っておかなければケルトに取られてしまう。
そうなれば、躍り巫女と呼ばれる彼女は自分を嫌悪するようになるだろう。
なぜだか、それは嫌だった。



「……なによ、じっとこっち見ちゃって」
「……どうしてあの大人しい子がこうなったかなぁ」
「はぁ?」
「昔はヤン兄さんってくっついて来たのに」
「い、いつの話よそれぇ!!」
「初めてあった時かな」

ギャーギャーと喚くおちびを放って、思う。
あの時強引にでも教え込んでいたからこそ今日がある。
泣き虫で、弱虫だったこいつが1人でも生きていけるようにはなったと思う。

――ただ、本心すらも演じてしまう彼女を作ってしまったのは自分だ。

「……おちびにとって、自由ってなんだい?」
「そりゃ、何物にも縛られず自分の好きなように生きることよ。
変人だって、いつもそう言ってるじゃないの」

……それは、本当に君の価値観なのだろうか。
それは、自分が君に掛けてしまった鎖ではないだろうか。

「おちび」
「なに?」
「……やっぱりなんでもない」
「何よさっきから。変人が変だわー。あ、変人だから変で当然か!」

ひとりで騒いでいるおちびに、心の中で謝罪を述べる。
素直だった君を歪めてしまったのは自分だ。
その演技を教えてしまったのは自分だ。

……どうか、いつか。
君が君のまま過ごせるようになりますように
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