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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:クムン】

幼い少女達を見て、思い出す。
かつて自分達の代わりに散った、健気な片割れ。

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「待ってよお姉ちゃーん!」
「ばかっ、早く来なさいよー!」

買い出しの帰り道、2人の少女達とすれ違う。
その光景に、つい彼女達の事を思い出した。
自分達と同じ月に生まれ落ちたが為に12年と8年しか生きられなかった少女達の事を。

「……もう、20年近くになるのか」

この世界で過ごした時間を除いてしまえば、12年にしかならないが、それでも長い。
彼女達の生い立ちを借り、彼女達として隠れ生きてきた。
彼女達こそが、皇女。少なくとも、あの日から今日までは彼女達が最も気高き女性。

幾度、あの場で彼女達を逃がすことが出来ていたらと思っただろう。
幾度、共に逃げて生きられたらと思っただろう。
失ってから、やっと気がついたのだ。
彼女達は、自分達にとってかけがえのない存在であったと。


――リュンア様、お許しくださいませね。……スカッシュ、覚悟は良くて?
――もちろんよクムン姉さん。これが、私の使命。あぁ、泣かないで下さいませアイシェ様!


我等が皇女という枷に囚われていたと同じように、彼女達もまた重い鎖を与えられていた。


――どうぞお逃げください。一晩くらいの時間は稼げましょう。
  どうか、御二人は生き延びてくださいませ!
――私は、アイシェ様の影。
  アイシェ様と同じ生活を送らせて戴いたのです。今こそ、ご恩を返す時ですわ。


生まれたときから皇女と同じ生活を約束される代わりに、
世間から秘匿され有事の際には皇女の代わりに死なねばならぬ。
皇女に不幸があれば、その日の内に命を絶たれねばならぬ。
そんな、不条理。彼女達は実の親も家も知らずに死んでいった。

最期に聞いた彼女達の言葉は、見た背中はこれ以上にないと言うほど凛としていて。
けれど、微かに震えていたのを忘れはしない。
それは死への恐怖か或いは。


――ローズ様のお言葉をお忘れなきよう。"女神の誓"を目指してくださいませ。
――宵闇の王、ライゼン様が助けて下さいますわ。
  盗賊団の頭領と言えども裏の王と呼ばれる方です。信頼できますから。


結局、追手を撒くために走っている内にライゼンは死んでしまった。
道にも迷い、食べるものもなく、時魔法の反動で吹雪の中気を失ったらしい。
気が付いた時には、ケルトに拾われて女神の誓にいたのだ。

「……ほんに、レアル様には感謝してもまだ足りぬ」

もし、ケルトではなく兵に見つかっていたら。
もし、そもそもケルトが通り掛からなければ。
もし、もし、もし……

最悪な事態が起こる確率の方が遥かに高かったというのに、自分はこうして生きている。
妹もまた幾度死んだかわからぬが、それでもねじ曲げられた歴史の果てに生きている。
全ては、生きよという思し召し。どれだけ辛くとも歩き続けよという啓示。


全ての死者に祈りを捧げよ、罪を告白し懺悔せよ。
それが巫女たる我が使命。
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