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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ヤンディ】
これの続き的な。

遠い昔。
父と慕ったあの人が歴史の闇に飲まれる寸前にヤンディに託したもの。
それは、盗賊団の歴史と宿命。そして兄を守る力。

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+ + + + + + + + + +
勢い良くベッドに飛び込む。
思えば、この柔らかさに慣れるまで
結構な時間がかかったものだなどと考えながら天井を見つめる。

「……はぁ、秘密って重いなぁ」

ころりと寝返りを打てば、先程巻き直したばかりの腕の包帯に血が滲んでいるのが見えた。
恐らく、別の箇所も同じように滲んでいるだろうと、そっと額の包帯に触れる。

「いで……っ」

手を引っ込めた拍子につい力を入れてしまい、連鎖的に全身の傷が痛みを訴える。
これらは別に、戦闘でついたものでも死神につけられたものでもない。
ケルトの"影"として引き受けた、女神への誓い。
親父さんとした、最後の約束。

「……父さん、おいらはあいつを支えてやれてるかぃ?」

目の前に転がっている聖印を、じっと見つめてから手に納め目を閉じた。



「……いいか、ヤンディ。俺達は恐らく死ぬだろう。
 ケルトを支えてやってくれないか。表面上はあいつを後継に指名する。
 だが、あいつは感情に任せて先走る事も多い。
 ……あいつの"影"として、共に"女神の誓"を守ってくれないか。
 まだガキなお前に頼む事が酷なのは分かっている。
 嫌なら断ってもいい、いざとなれば破棄してもいい。
 俺はティーアン様の詳しい教えは知らないが、"影"の重さは知っているつもりだ」
「……父さん、それはボスとして?」

あの時、答えがどちらでも受ける気ではいた。
父親としての恩も、ボスとしての恩もあったから。

「いいや、お前達の父親としてだ。強制はしない。
 2人で力を合わせて戦い抜いて欲しい。俺がいなくなったとしても。」

あの時、自分は親父さんの望んでいた言葉を紡ぐことが出来ていただろうか。
もしかしたら、引き留めて欲しかったのではないだろうか。

「ケルトは知ってるの? 明日の事とこの事」
「……まだ話していない、このあとだ。
 それと、ケルトには"影"の事を伝えないつもりだ。余計な負担になりかねん」

あの後、結局親父さんはケルトに言い出せなかったらしい。
言わずに王のもとに行き、魔法狩りの被害者になった。
……ケルトがおかしくなったのは、そのせいだと思う。

「真名を知らなきゃ契約はできないよ」
「俺が知ってる。代理はやろう。……やってくれるかヤンディ?」
「……うん。父さんには返しきれない恩もあるし」
「すまないな、お前ばかりに背負わせてしまって……よし、これは先に渡しておこう」
「……聖印? それに、魔宝石だ、これ」

そう、まさにあの時。聖印をもらった。
後から聞いたことだが、ケルトもこの後にもらったらしい。
ケルトは青い魔宝石、自分は赤紫の魔宝石が嵌め込まれた聖印。

……魔宝石を貰って、どれだけ嬉しかったことか。
親が子に渡す愛情の証。自分を息子だと思ってくれていることが、この上無く嬉しかった。



あの後、本人不在のまま"影の誓い"を立てた。
ケルトの"影"として、身代わりになるという誓い。
自由神の下に生まれた人の子だけに許された、恩の返し方。

ただ、そこは自由神らしくそれを達成するか破棄するかも自由な、
口約束レベルのものなのだが結局破棄はしなかった。
破棄してしまえば、親父さんを裏切ってしまう気がして。

「……思えば、事情を全部知ってるのおいらだけか」

なぜ、盗賊である親父さんが王と面会できたのか。
なぜ、おちび達は"女神の誓"を探していたのか。
なぜ、皇族が皆死んだのか。
なぜ、王は魔法狩り令を出したのか。
おちび達の出生も、ケルトの真名も。

……自分が親父さんの子でない事も、ケルトよりずっと早く知っていた。

これのどれもこれもが他人には簡単に明かしてはならない秘密だ。

「……秘密って、重いよ……」

ぎゅっとシーツを掴み、身体を丸める。
不意に、短剣に伸びそうになった手を封じるように。

「……死神、頼むから今日だけは放っておいてくれよ。ほっといてくれ……」

それでも尚、短剣を手に取ろうとする身体を押さえつける。
ぎゅっと聖印を握りしめ、女神への祈りを紡ぐ。
今、死神に取り込まれたら帰ってこれない、そんな気がして。

心地好い眠りの予感に、必死に抗う。
このまま寝てしまえば死神の思う壺だと。

けれど、疲れはてた身体は休息を求める。
結局、その努力は無駄に終わり深い闇に落ちていった。
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