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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【メイン:ケルト】

死ねと言い合い喧嘩しても、やはり2人は。
かなづちなのは親父さんのスパルタのせい。
泳ぎが上手いのは何度も溺れたバカを助けたせい。

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「……どうしてこうなった」

ここはイズレーンのどこかにある泉。
ケルトは現地の子供たちに囲まれ、少しひきつった表情で畔に立っていた。

「にーちゃんも飛び込めよー!」
「だから! 俺泳げねぇんだって言ってんだろうがぁ!!」
「教えてあげるからはやくー」

聞く耳を持たない、無邪気な子供たちに囲まれるまでの経緯は30分程前に遡る。

イズレーンでの遠征を終え、スカッシュとクムンは買い出しに。
そしてヤンディに連れてこられたのがこの泉。
当のヤンディは探検してくると言ってどこかに行ってしまった。

やることもなく、泉から少し離れた木の下で剣の整備を行っていたら、
水浴びをしに子供たちがやって来たのであった。
どうにも、ケルトをイズレーンの傭兵だと思っているようで
警戒心の欠片も感じず、むしろいい遊び相手ができたと喜んでいる。

……その結果、泉に入れと無理矢理畔に連れてこられ現在に至る。


「ってか兄ちゃん、よーへーの癖に泳げないのかよ」
「あのな、傭兵は泳げなくても戦えればいいんだよ」
「つまんないー! お兄ちゃんも一緒に泳ご? ここ、浅いのよ?」
「俺の腰より水位があれば深いんだ」

単純な話、ケルトは水が怖いのである。
それこそ、桶に溜めた水にすら顔がつけられない程度には。

「っていうかどうみても深いじゃねぇかよ! お前ら足ついてないだろ?!」
「えー、これくらい普通じゃねーかー」
「大体な、鎧着て剣持って泳ぐ奴がいるかってんだ」
「脱げよー! 置けよー!」
「こ・と・わ・る!!」

いくらほのぼのとした平和な雰囲気とはいえ、ここは敵国のど真ん中。
そんな場所で武装解除など出来ないのだ、泳げないことを差し引いても。
……まぁ、鎧自体は軽い物であるので重みで浮かべなくなるということはないであろうが。

あまりに飛び込む様子を見せないケルトに子供たちがついに痺れを切らし、
1人の少年が後ろからタックルをかます。

「うおっ!??」

当然、バランスを崩したケルトは数歩前に出る。
数歩先は泉。勢い良くダイブし、子供たちは大笑い。
すぐ水面に顔を出すケルトだがまた水中に消える。

「助け……ぶはっ、ゴボッ」

空気を求め必死に足掻くケルトをしばらく笑って見ていた子供たちだが、やがて1人が呟く。

「……本当に泳げないんじゃない、あの兄ちゃん。助けた方がいい気がする」
「あたしも、可哀想だよ」
「仕方ねぇなー、俺が行ってきてやんよ」

リーダーと思われる少年が泳いで近付こうとするが近くにいた少女がそれを引き止める。

「待って! あそこって確か水草の森! 助けに行っても危ないわよ!!」
「……あ、本当だ気がつかなかった……!!」

足掻いているうちに移動してしまったのは水草が異様に多い地帯。
子供たちは知っていた。
いくら泳ぎのうまい子でも、
あそこに入ってしまえば足をとられて簡単に溺れてしまうことを。

「ゲホッ……だれ、か、だすげッゴホ!」

明らかに水面に顔を出す回数が減り、水しぶきも弱まっていくケルト。
どうしようと子供たちが相談してるうちに、
やがて大きな泡を最後に浮かび上がってくることは無くなった。
それと同時に男の声が響く。

「ケルト!!」

声の主……ヤンディは迷うことなく泉に飛び込んだ。
素早くケルトの背に回り込み引き上げようとするが、
水草がケルトに巻き付いてしまい容易ではない。

ケルトの鼻をつまみ、口から息を吹き込み一度浮上するヤンディ。
大きく息を吸うとすぐさまケルトの元に戻り、腰から短剣を抜き水草を切り裂いて行く。
そして、ケルトの背負っていた剣を抜き捨てると
もう一度息を吹き込み背中側から引き上げる。

そのまま地面にケルトを引っ張り上げ、人工呼吸を行いながら器用に鎧を脱がせた。
そして胸に耳を押し付けると表情が更に険しくなり、すぐさま心臓マッサージを始める。

「戻ってこいケルトぉ!!」

何度か心臓マッサージと人工呼吸を繰り返してるうちに、ケルトは水を吐き出し噎せ返る。
一瞬ほっとしたような表情を浮かべたヤンディだが、
すぐに真剣な表情に戻り水を吐き出しやすいよう姿勢を変えてやる。
ケルトの身体を擦りながら、未だ泉の中にいる子供たちをヤンディは睨んだ。

「……こいつ、泳げないって言ってなかったかい?
 もしかしなくても、君達が引きずり込んだんじゃないだろうね」
「……いい、ヤンディ。無闇に近づいた俺も悪い」
「良くない!! 君は今、死にかけたんだぞ!!」

蒼白な顔で噎せながら子供達を擁護するケルトに、珍しくヤンディが声を荒げる。
ヤンディの気迫に子供たちは泣きそうになりながらごめんなさいと謝罪を口にした。
そして、ぽつりと誰かがこぼす。

「……あれ、帝国の国章だ」
「……ヴァルトリエのヤンディって、聞いたことある気がするよ?」
「確か、死神がどうって知り合いの傭兵さんが……」
「ああそうさ、その冥界の探検家ヤンディだよ。
 死神憑きとも呼ばれるけどね。さっさとお家に帰りな、じゃなきゃ君達を呪いそうだ」

低い声と鋭い視線で子供達を睨むと
子供達は小さく悲鳴を上げて我先にと木々の奥に姿を消していった。
その様子を見て、ケルトはぽつりと言った。

「……脅かしすぎだろ」
「悪ガキにはちょうどいいよ。
 剣拾ってきてやるから休んでな、早く姫さんたちと合流しよう」
「……あー、剣どこだ?」
「泉の底」

それだけ言うと再び泉に潜るヤンディ。
ケルトは苦笑しながら、倦怠感の強い身体を休めた。
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