英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
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何もない暗闇。
自分の姿すら見えないほどの。
ここは、どこだろうか。
寒さには強い筈の自分でさえ凍えきる寒さ。
そもそも、自分はなぜここにいるのだろう。
帰らないといけないのに。
――帰る? 一体どこに?
途端にたくさんの景色が溢れ出す。
雪原、草原、花の絨毯、砂漠、森、月夜、古い建物、洞窟、盗賊、貴族、王族、皇国、帝国、星空、天上の庭園、失われた文明、壊れる世界、破滅の歌、選別の時、召喚の魔方陣、癒しの光、契約、光に落ちた闇、闇に堕ちた光、重なる死骸、終わらぬ争い、女神の宝、竜の大河、守護者、誓い、朽ちゆく形、断罪の刻。
叫んだ。否、叫ぼうとした。
音にならない悲鳴に構わず、許容を超えてあまりに多すぎるものが流れ込む。
痛い、苦しい、怖い。
それでも、闇は容赦してくれない。
祭壇の光、偉大なる王、生れ落ちた神々、神を屠る魔法、追放された邪神、残された呪い、刃を振り上げる女、神殿の聖域、泣き叫ぶ赤子、全ての親たる八竜、笑う、怒りの男、死への導き、本来の業、冥界の闇、属せぬ悲しみ、信を失った神々、輪廻の結末、魂の行く末、消え行く聖霊、夜精霊の王、違えた道、墜ち行く星々、絶望の街、星見の失踪、どれい狩り、魔法狩り、止まぬ悲鳴。
流れてゆく光景は全て残酷で、悲惨で、まさに生き地獄。
目を逸らしたくともそんなことは許されず、ただただ流れ込む凄惨な状況を受け入れるしかない。
「――――」
口を開けど声は出ない。
もがいても足掻いても、そこから抜け出せない。
どこからか、微かに笑いとともに聞きなれたような声が響く。
「――やっと、やっとじゃ。やっと手に入れた。お前はわしのモノじゃ“ディフリーヤ”!!!
喰らってやろうと思うておったが実に勿体無い。
闇を知れ、闇に墜ちろ。我が系譜の眷族にしてやる。
人間如きがこのわしに拾い上げられるのじゃ、何がよいかのう。
悪夢、常闇、案内人でもよいか。何、悪いようにはせん。感謝するのじゃな」
楽しそうに笑うその声の主が、憎くて、嫌悪感が強くて。
けれど次第に従わなくてはいけないとも思い始める。
―― …………! ……ん、……ち……め……!!!
笑う声とは、また別の声が更に遠くから響く。
聞いたことがあるような、ないような。
それは必死に声を張り上げているようだが雑音が酷くて聞こえない。
「ええい、あの小僧め!! 現に残した破片から辿って来よったか!!」
―― ……、…メ、………らあ……! ………こ……へん………な………う!!
誰かが叫んでいるような気がする。
一体、誰がと考えたところで意識が飛ぶ。
黄金の風、魔道科学、傭兵、黒水晶、緑化公園、見つけた希望、白の祝福、炎の神鳥、暖かな愛、打ち上げ花火、騒がしいパーティ、優しい守護、ハロウィン、王の失踪、宝、不思議な生物、霞んだ夜空、お菓子、明るい家族、探検の結末、長い戦争、勝利の宴、黄昏の聖域、繰り返される時、黄金の門。
流れ込んできたものがとても暖かくて、今までの苦痛が取り払われる。
一筋の光がどこからか伸びてきて、全身を包み込む。
よくよく見れば、白かと思ったそれは灰の光で。
「させるかD!!! そもそも貴様には干渉権は無いはずじゃぞ!!」
流れ込んでくるイメージに、また惨劇が混ざり始める。
けれど不思議と先ほどよりも苦しさは無い。
『冥界の王イサスベリ、ボクはマスターの願いを実行するだけ。
お前に魂を決して渡さない。
それが、灰の希望神Dと“ディフリーヤ”の間で交わされた契約だ。
……かつて、ボクがお前を呼び出した魔法陣でね』
意識が、遠のく。
一体何が起きているのか理解はできないが、ただただ、灰色の光が心地よくて。
ふわりと身体が浮いた感覚を最後に、全てを手放した。
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29
性別:
女性
誕生日:
1994/05/10