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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【メイン:ケルト】

精神の傷も親友のおかげで癒え、
久々にみんなと酒を飲みたくなった。

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「なぁ、久々に皆で酒飲もうぜ」

長い間禁酒をしていたらしいケルトが、夕食の後にそんな提案をしたのだった。
断る理由もなく夕食の片付けの後、彼の部屋に4人が揃った。

「どうしたのよボス、禁酒してたんじゃないの?」
「ん、そろそろ解禁しても良いと思ってな。久々なんだ、1人で飲むのはつまらねぇから」

地べたに座るケルトに向かって、近くの酒樽に腰掛けたスカッシュの問いが投げ掛けられた。
さも当たり前だと言うように答えるケルトに、正面に片膝を立てて座るヤンディが更に問う。

「シェザ誘えば二つ返事でおーけーくれるんじゃないのかい?」
「ああ、あいつとは明日約束してる」
「明日もか?程々にするのだな」

けらけらと笑うケルトにヤンディとクムンは呆れ、スカッシュは微妙な表情を浮かべる。
そんな事など気にせずに、少し小ぶりな箱を開けて1本目の酒瓶を取り出した。
包装を見るに、イズレーンの物だろうか。

「結構前にあいつから貰ってな。
 あいつと飲もうかとも思ったんだが……お前らと飲みたくてよ」

封を開け、4つのグラスに注ぐ。常温のそれに溶けた氷が綺麗な音を立てた。
誰からともなく、全員の手にグラスが渡り乾杯の音頭を待つ。

「そんじゃ、乾杯!」



それから、僅かに2時間。
数本のワインが空になっているものの、それでも普段の量よりは遥かに少ない数だ。
まさにこれからだと言うのに、部屋の主は自身のベッド上で潰れていた。
それを横目で見つつ床で飲み続けるヤンディと、
可愛いものを見るような視線を送るスカッシュ。
そして、ベッドに座っていたが故に
膝枕をするはめになったクムンは、柔らかい表情で赤髪を撫でる。

「なんか、あんなボス初めて見た」
「こんなあっという間にこいつが潰れるってのが信じらんない」
「まぁ、たまには良いのではないか? こやつもまた、普段は溜まることが多かろう」

スカッシュがベッドに腰掛け、ケルトの頬を軽くつつく。
微かに眉を寄せたものの、
大した反応を見せないケルトがつまらないのかスカッシュの手は止まらない。

「珍しくミナトにあいたいーなんて言ってたわね」
「ほんに、皆元気にしておるとよいが」
「平気だよ、向こうも大して変わってないはずだから」
「はぁ?なんでそんなこと分かるのよ変人」
「あのねぇ……おいらの後ろに何がいるか忘れてないかぃ」

ぐっと手元のワインを飲み干し、今度は別のグラスに麦酒を注ぐヤンディ。
未だスカッシュにつつかれ続けているケルトが、不意にその手を掴んだ。

「あいあい……すかっしゅちゃんそこまで」
「あ、起きた?」
「……やん、でぃ、つまみぐいは、なーさんに……」
「してないし、ナーさんって十何年前だよ……もうダメだろこいつ」

むにゃむにゃと再び眠りに落ちるケルトに思わず苦言をこぼすヤンディ。

「ナーさんって?」
「青の当主様。ケルトもその事知らなかったはずだけどね」

なんてことないように、グラスを傾ける。
そして、全員のグラスが空になった頃を見計らって声をかけた。

「じゃ、御開きにしようか。主催がこれじゃあねぇ」
「……それはよいのだが、少し手を貸してくれ」

クムンの声に視線を向ければ、
困り顔の彼女と彼女の手首をしっかり掴んで離さないケルトが確認できる。
ただでさえ枕にされて動けないというのに、確かにこれではどうしようもないであろう。
やれやれとばかりに腰を上げ、ケルトを引き離そうとするヤンディ。
だが、いやいやとばかりに緩く顔を振って空いている手で今度は服まで掴む始末。
屈んでケルトの顔を覗き込むと、小さく溜め息をつく。

「……まだその癖残ってるのかい君は」
「癖?」
「子供の頃からさ、誰かにくっついて寝るのが好きなんだこいつ。
 引き離そうとしても、今みたいに全力で拒否する。しかもぐっすり寝てるからたちが悪い。
 ……あ、そうだおちび。君抱き枕かなんか持ってない?」
「わかった、持ってくるわ」

そっと部屋を出たスカッシュだが、やがて大きめな抱き枕を持ってくる。
それをヤンディに渡すと、興味深そうに眺め始めた。
ヤンディがケルトにそれを押し付けしばらくすると、もぞもぞと抱き枕に手を伸ばす。

「……やっぱりこれも変わらないか。
 親父さんが見つけたんだけど、代わりの物押し付ければそっちに移るんだ」

手慣れた様子でクムンから下ろし、布団を掛けてやるヤンディ。
解放されたクムンは最後にまた赤髪を撫でて言う。

「こうも無防備に寝ていると、年長者とは思えぬな」
「ボスって大人だけど誰より子供だもの。甘え足りないただの男の子」
「ま、普段しっかりしてくれてるんだから文句は言わないさ。
 ほら、姫さんとおちびはもう休みなよ。片付けはおいらやっておくから」



片付けも粗方終わり、部屋を出る前に布団を掛け直してやるヤンディ。
ぎゅうっと抱き枕にしがみ付いて子供のように眠るケルトに、またひとつ溜め息をつく。

「酒飲んで潰れなきゃ素がでないってのも考えもんだよなぁ」

返事は当然無い。近くにあった酒瓶を無造作に1本取った。
そして扉まで歩きながら、無意味な断りを入れる。

「ケルト、1本貰っていくよ。おやすみ」

扉を後ろ手で閉める時、まだ若干呂律の回らない声がヤンディの耳に届いた。

「……おやすみ」
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