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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ヤンディ】

いつか来てしまうんじゃないかとは思っていた。
産まれた時に拒まれ、慈悲で拾われ。
――もう自分は光では在れないのだと突きつけられた。

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「いっ――!?」

いつものように聖印を懐に仕舞おうと触れた途端、激痛が走った。
思わず落としてしまった聖印を拾い上げようと手を伸ばせば、
再び襲う激痛と弾かれて床を滑る聖印。

「こ、れ……」

まるで、ティーアン様以外の神殿に踏み入れようとしたときと同じだ。
激痛と共に弾き出される、あの感覚と全く同じだった。

「――あは、はははっ!はは……」

乾いた笑いと共に、その場に座り込む。

――ついに、ティーアン様にさえ見放されてしまった。
それも、聖印の所持さえ許してくれない。
今までは、ティーアン様が加護を下さっていたから反論の余地があったと言うのに。

「――もう、向こうじゃ……ゼイストじゃ、暮らせない」

本当の意味で、“悪魔の子”になってしまった。
全ての三女神に拒否され、どうしてあの国で生きられようか。

ただ放心して座り込んでいると部屋の扉が開く。
入室した誰かに向けて、拒絶の言葉を放った。

「――出てってくれ」
「……マスター?」

ただ事ではないと判断したらしいDが
床に落ちていた聖印を拾い上げ、目の前にしゃがみこんだ。

「どうしたの。これ大切なんだろ?」
「……いらない。君にあげるよ」
「や、ボクも要らないなぁ。……本当に何があったの?」
「……」

黙っていれば、Dが手を取ってそっと聖印を乗せた。
だが当然、掌に残るはずも無く聖印は宙を舞い床に落ち、三度目の激痛に表情を歪める。
Dは驚き聖印を見つめていたが、やがて顔を怒りに歪ませた。

「――あ、の……っバカ女!!!」
「……!?」

今までも女神の文句は口にしていたが、
ここまであからさまに怒りを露にするDを初めて見た。
さすが聖霊と言ったところなのか、その身から溢れる力に圧倒される。
いつもの穏便な彼は、そこにいなかった。

「マスターを拒否するって事が何を意味してるか分からないのか!!?
 自分の勝ちが薄くなったからって、人の子1人の人生だって軽視してるのかっ!!!
 ありえない、なんでこんな無責任なこと……!!!!」
「……D?」
「ああもう、本当に関係絶ってやろうか!! 何が秩序だ世界の均衡のためだ!?
 あんな我が侭で自分勝手な女なんかこっちから願い下げだ!!!」

そっと辺りを見渡せば、
Dの恐ろしいほど膨大な魔力でベッドが浮き始めているのが確認できた。
既に小物は中に浮いているし、確かに彼は神格を持っているのだと思い知らされる。
……だが、これ以上部屋を荒らされたら堪ったものではない。

「D!!!」

腕を強く引いて大声を出してやれば、ハッとして同時に浮いていた物も元の場所に戻った。

「――ごめん、マスター」
「もう、いいよ。それで、何のよう?」
「これをマスターに着けてもらおうと思って」
「……腕輪?」

Dが懐から取り出したのは幅広の腕輪。
一見、光沢は無いが普通の銀製品に思える。
それをこちらに渡し、着けるように催促するので左手に嵌めた。
すると途端に身体が軽くなったように感じられ、驚いてDを見る。

「それ、できる限りずっとつけていて欲しい」
「なんだいこれ? すごく楽になったんだけど」
「“ノードゥス”。繋がりを意味する腕輪だ。これでマスターの魂と身体を繋げておく」
「君と紫苑がやってくれたんじゃ――」
「やったよ」

だけど。とDが続ける。
その表情はいたって真剣なもので。

「ボク達の力で分離してしまわないようにすることはできない。
 それをやってしまうと、今度はマスターがボク達の力に耐えられないからね。
 だから、それで縛る。もしそれが完全に壊れてしまったら……今度こそ手を出せない」
「……つまり、命綱ね」
「そういうこと。それと同じ指輪をボクが身につけるから、
 壊れそうになればすぐに修復できるようこっちで力を尽くす。
 ……短時間なら、それこそ2日くらいなら無くても生活できるだろうけど、その後は――」
「分かった、気をつけるよ」

じっと腕輪に視線を落としていると、Dが聖印を拾って扉に手を掛けた。
背を向けたまま聖印を見つめてぽつりと零す。

「代わりの台座、用意するから」
「え?」
「……ボクを示す印に、宝石だけでも埋め込むから。これは、大切なものだろう?
 ――形や大きさは変わってしまうだろうけど……任せて」

答えるよりも早く扉が閉められ、呆然としたのだった。


――後日、腕輪と同じような色合いをしたネックレスを受け取った。
五芒星が刻まれた星型のネックレス。
その中央と各頂点に埋め込まれた小さな赤紫の宝石が輝いていた。
恐る恐る触れてみても、痛みも無ければ弾かれることもない。

灰と希望の神を表す灰の五芒星を、もう手放すまいと密かに誓った。
自分は女神の子ではあれない。
けれど、紫の運命竜と灰と希望の神に信を置くことはできるのだと。
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