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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【メイン:全員】

部隊長は不在。
兄と姉には巻き戻る時から身を守る術は無く、末妹だけでは到底不可能。
でも、そのあたりも考えているのがあの子。
“天才”は今だ健在なのだから。

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+ + + + + + + + + +
「あっ、そうだ。姉さんもボスも今日は拠点から出ないでね」
「んー?別に構わねぇがどうした?」
「今日にでも巻き戻ると思うから!」
「な……っ!?聞いておらんぞ!?」
「言ってないもの。今回はあたしが1人でやるの!」
「無茶だ!!」

朝食の席。
スカッシュは数日前から感じていた空間の乱れから黄金の意思を予測していた。

――時間のリセット。
二度経験してきたそれで、多くの出会いと別れがあった。
これに巻き込まれれば、きっとこの世界での出来事を忘れてしまう。
故に今まではクムンとスカッシュの2人で乗りきって来たのだった。

「それがね、無茶じゃないの」

これ見て、とスカッシュが一枚の紙を取り出す。
そこに描かれているのは複雑かつ膨大な情報を秘めた魔法陣。

「……これは」
「多分、Dが描いてくれたものだと思う。
 書式とか魔法語の選び方がかなり古いし、
 構造を理解できなくても魔力を通しさえすれば発動するようになってる。
 必要な魔力もあたしだけで賄えるわ」
「範囲は?」
「ちょっと試してみたけど、拠点全体を包むくらいなら余裕ね。
 ……今、Dの魔力は使いたくないの。
 Dの魔力を使って姉さんがこれに参加したらきっと変人に掛かってる魔法が解けちゃうわ」

じっとクムンの目を見据えるスカッシュ。
やれやれと肩をすくめ、クムンが口を開く。

「承知、抜かるなよ」
「当然よ、このあたくしスカッシュちゃんにお任せなさい!」

胸を張るスカッシュに、クムンとケルトは呆れたような表情をみせる。
それが不満なのか、いつものように騒ぎ始めるスカッシュ。
――女神の誓に、日常が戻りつつあった。ただ、1つの不安を除いて。



灰と黄金が支配する空間の狭間。
灰の髪を持つ青年がヤンディの前に立つ。

「それじゃ、マスター。計画を説明するね」
「うん、できるだけ分かりやすく頼むよ」
「オーケー。まず、チャンスは一度きりだ。
 黄金が時間を巻き戻すその瞬間にマスターの肉体とボクの封印を解く。
 すぐにボクが身体から離れ、マスターと入れ替わる。ここまではいいかい?」
「大丈夫だ」

ヤンディが答えを返せばにこりと微笑み、すぐに険しい表情へ変化させる。

「でも、大変なのはここからだ。
 マスターの肉体を闇側に傾けたとはいえ、元は光の器だ。
 完全に闇の性質に変わってしまった魂を受け入れられるとは思えない。
 ボクと紫苑で無理やり定着させるまでの間、
 マスターには相当の負担が掛かる。覚悟しておいて」

ヤンディがしっかりと頷くと、
横でクッキーを頬張っていた紫の長髪の女性がヤンディの手を取る。
無表情ながらも、その瞳には覚悟と優しさが浮かんでいた。

「紫苑、頑張る。ヤンディ、頑張る!」
「うん、耐えて見せるさ。耐えられない道理はないだろ?」
「運命変える、紫苑できない。ヤンディできる!」

ヤンディの頭を過ぎったのは、
Dの『紫苑が運命だの言い出したら大体めんどくさい』という言葉。
運命竜たる紫苑が見た夢は、まず変わらないというのが聖書の記述であるが……

「……まさか夢見た?」
「夢、絶望的……平気!!」
「どこも平気じゃないぞそれっ!?」
「まぁ……紫苑の夢って極端だから気にしないほうが」
「気にするよ!?」
「ほら、もう時間が無いからおしゃべりおしまい」
「ちょっと!?」

有無を言わさず灰色と黄金に包まれ、ヤンディの意識が飛ぶ。
気が付けばそこは眩しいほどの白と冥界のそれとは違う黒が混在する空間であった。

ここはどこだと考えるよりも早く、弾かれるような感覚を覚えた。
しかしそれと同時に押し込むような力も掛かり、割かれるような痛みがヤンディを襲う!!
必死に歯を食いしばり、自身が拡散してしまわぬよう魂を魔力に変換してゆく。
竜に教わったそれは危険を伴うが、拡散してしまうよりずっとマシだと。

――どれだけの時間が経っただろうか。
数分だったか一瞬だったのかヤンディは判別できなかったが、視界は黒一色に染まっていた。
……否、目を閉じているだけだと気が付くまでに数秒掛かっただけであった。
重い目蓋を抉じ開けると、そこにはヤンディにとって懐かしい顔が揃っていた。



――それから、数日。

「変人、まだー!?」
「もう行く、ちょっと待って!! ――まったく、どこ行ったんだよぅ」
「マスター、探し物はこれかい?」

ヤンディが声に振り返れば、そこにはカウボーイハットを持ったDが立っていた。
カウボーイハットを受け取ると、
机に置いていた星形のネックレスを手に取り身に付けるヤンディ。
Dは部屋を出ようとするヤンディを引き留め、幅広の腕輪を2つ渡す。

「忘れ物。少なくともこっちは外さないでって言ってたのに」
「あっと……危ない危ない、ありがとう。じゃ、行こうか」

手早く腕輪を両手首に嵌め、カウボーイハットを深く被った。
2人が談話室に現れるとお転婆娘の文句が飛ぶ。

「遅い!!」
「仕方ないだろ、色々着けなきゃいけないんだから」
「大体必要無いじゃないの、少し外したら?」
「この格好が一番気合が入るのさ。これでも控えめにしたんだぞ?」
「すっごくガチャガチャしてるわよ、動きにくくないの?」
「えー、普通だけどなぁ」

女性であるスカッシュよりも多いアクセサリーの数にいくつかのため息が漏れた。
そんなヤンディの格好といえば。
いかにも重そうなほど装飾品の付いたカウボーイハットに、
ピアスと長さの違うネックレスが数本。
腰には武器としても扱うロープとウォレットチェーンがやはり数本。
腕には先ほどDに渡された2つの腕輪の他にも、様々な太さのものが付いている。

「まぁまぁスカッシュちゃん、その内元に戻るだろ。
 それによく考えてもみろ。こいつ、こっちに来てからは
 そんなに着けてなかったけど昔はこれがデフォだったじゃねぇか」
「そういわれると……」
「ほれ、無駄話をしておると遅れるぞ?」
「あっ、そうだった!!」

それぞれの武器を確認し、5人は拠点の外に出た。
そしてクムンだけが足を止め4人を見送る。

「――我らが女神の誓に次女神レアルの勝利の加護あれ!!」

柔らかな光が戦場に赴く4人に降り注ぐ。
どことなく心配そうに、けれど凛として黄金の遊戯に参加する4人を見つめていた。

「それじゃ行って来るぜ!!」
「うふふ、じゃあね!」
「任せておいて、君の代わりはちゃんとボクが果たすよ」
「……ま、勘を取り戻すまでは大変だけどねぇ。適当にやるさぁ」

思い思いの言葉をクムンに投げかけ、歩みを進める。


黄金の遊戯も既に4度目。
“神聖霊”Dを加えた女神の誓の面々が織り成す黄金は、かの存在に認められるのだろうか。

その答えは、黄金のみぞ知る。
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