英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
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「そんなに気に入ったなら全部持ってきちゃえば良いのに」
「いや、1本でよいのだ」
クリスマスの前夜祭で、ヤンディが貰ってきた蒼い薔薇。
元々は花束だったが、そこから1本だけ貰って部屋に飾った。
「なんで?」
「……大昔の事を思い出しただけの事だ」
遠い昔。
定められた人と初めて出会ったあの日。
とても可愛らしい男の子と庭を歩いているときに
プレゼントしてくれたのが、この蒼い花だった。
「でもあたし初めて見たわ、蒼い薔薇なんて」
「自然界では生まれえぬと言われるからな。我とて昔一度見たきりだ」
―― ぼくのくにの、けんきゅうしゃがつくったばらなんです
―― ほう……魔法ではないのか?
―― このくには、まほうがありません。だから、かがくでうみだしたそうです
幼いながらもその地位を理解し、多くのことを学んでいた彼は今どうしているのだろうか。
婚約が破棄されてすでに久しいが、あの日の事は未だによく覚えている。
「え、どこで見たの?」
「元婚約者がいたあの城でな」
「……ああ、あの愛に生きてる王子様」
「昔は謙虚で可愛らしかったがな」
「何歳のときよ」
「確か向こうは5か6だったと思うが」
―― あなたがこんなにきれいなひとで、とってもおどろきました。
―― そちらも、聞いていたよりもずっと立派な方だ。
―― ……ほんとうに、ぼくみたいなこどものきさきになってくださるのですか?
―― もちろん、気になさることは無い。あと、10年もすれば気にならなくなりましょう。
―― ぼく……
「……姉さん、何笑ってるの?」
「いや何、可愛らしい宣言を思い出してな」
「宣言?」
「僕はこの国と、美しい貴女に相応しい王になってみせます……だったか」
「うわ、昔っから歯の浮くような台詞言ってたのねぇあいつ」
蒼い薔薇の花言葉は、奇跡と神の祝福。
彼は知っていたのだろうか。
広く知られているその花言葉とは別に、我が皇国のみで通じる意味があることに。
“貴女の美しさは永遠”
「……まぁ、あやつの事を想うたことはついに一度も無かったが」
「子供の6年差って大きいものね」
けらけらと笑い部屋を出たスカッシュを見送って、もう一度薔薇を視界に入れる。
「――そなたは国を背負うに相応しい人間になられた。
そなたがその花を贈るべきは我ではなく、そなたが想う人に。
親の決めた人ではなく、御自分がお決めになった人に」
我とは違って、貴方ほどの人間ならそれが可能でしょう。
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ティス
年齢:
29
性別:
女性
誕生日:
1994/05/10