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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:D】

かつてはボクもあの輪の中にいた。
親友と喧嘩して、少女にからかわれ、あの人に叱られて……楽しかっ……た?
――うん? あれ、懐かしいことは懐かしいけど、うーん……
多分、楽しかったんだろうなぁ。

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「ああそうかぃ、表出ろ!!」
「いいぜ、やってやろうじゃねぇか!」
「え、ちょっと2人とも!?」

止めようにも、どう諭せばいいかがわからない。
つい先程まで仲良くしていたと言うのに、一体何故こうなったのかさっぱりだ。
助けを求めて女性陣に視線を送るも、ため息が返ってくるのみ。
そうこうしているうちにマスターとケイルは外に行ってしまった。

「放っておけばよい」
「でも2人とも武器持っ――」
「なんか久々ねぇ、あの2人のくっだらない喧嘩」

どう考えても止めなければいけない雰囲気だったというのに、この2人はなんて呑気なのか。
片や雑誌を片手に果物をかじり、片や優雅にティータイム。
外から聞こえてきた鉄のぶつかり合う音に、玄関を飛び出す。

「なんで喧嘩に武器持ち出すかなぁ!!?」

そう叫んでも、2人は耳を貸そうとはしない。
口喧嘩をしながら、息を乱すことなく武器を振り回していることに感心しかけたが、
すぐにそんな場合ではないと気を取り直す。
このままでは2人とも大怪我をしかねないと、強行手段の姿勢をとる、が。

「“絶対手出すな”!」
「……っ」

やられた。
2人に向けて放とうとした拘束魔法が行き場を無くして、高めた魔力だけが燻る。
離れた場所にそれを解放してやれば、苛立ちも作用してかその場所の雪が消えさった。

「全くマスターも紫苑も勝手だよっ!」

どさりとその場で胡座をかく。
手を出すなと命令された以上、それに従う他ないのが召喚されたものの宿命とはいえ。

2人の剣は、ケイルが優勢に見える。
……彼が持つあの大剣を見たときとても驚いたものだ。
てっきり、女神に逆らったあの剣は勇敢な親友と共に砕かれたと思っていた。
使い手を選ぶあの守護の剣が彼を認めていることにも、内心では驚いたのだ。

対するマスターは、押されているように見えても一撃一撃を確実に流して見せている。
冥界の王の気配が色濃い呪いの短剣を振るう覚悟は相当のもの。
かつては自分があれを振るっていたが、いつ呑まれるかと恐怖したものだ。

不意に背後の扉が開いた。
見上げるように後ろを向けば、無表情の中に怒りを滲ませるアリスがいて。

「お主らはいつまでそれをやっておるか」

静かすぎるその怒りに、思わず身を固める。
別にそれはこちらに向けられていないが、
刻み付けられたそれは何千の時が経とうと働くらしい。
……当の本人たちは未だ気付かず打ち合いをしているが。

ああ、この後何が起きるかは容易に想像できる。
ボクも、遥か昔はマスターの位置にいたのだ。
境遇は違えど、“同じ”魂が集まるとやることは同じらしい。

「……リンゴ1つで喧嘩する奴があるか!!」


冬空の下、アリスの強力な水魔法が炸裂したのだった。
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