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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ケルト】

もう、何も信じられはしない。
己の思考も、家族の言動も、今見ているもの触れているものも。
もう何もかもがおかしい。

※一部過激表現他あり。苦手な方はご注意を。
 天狐さん(1x90)のシェザさんをお借りしております。

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部屋の隅で膝を抱えて座り込んでいた。
最近はもう、みんなの側に居ることすら苦しくて。
常に笑って平常でいることがここまで苦しいとは思わなかった。
そして何より、これほどまでに人を疑うのが辛いのは初めてだった。
自分すら信じられないのが、ここまで。

  ――家族を信じられずにどうして守れようか。
「……あいつらは、俺を信じてくれてる」
  ――本当にそうだろうか?
「そうだと、信じるしかない」

俺の側に立つ朧気な影が笑う。

  ――きっと偽りだぞ
「昔まで偽りで堪るかよ」
  ――お前がそう考えていることすら偽りだろうが

強く膝を抱え直す。
否と返すことすらできない。
こうして色々と考えても、結局は俺の本心でない可能性が捨てきれないのだ。

  ――ところでお前はこの状況のままでいいと思ってるのか?
「……まさか」

どうにかして、あいつを始末しないと。
  ――けど、真名を握られているなら逆らえないぞ

「……お前は一体なんなんだよ」
  ――俺はお前。俺が俺を案じて何が悪い。
「俺は、俺も信じてない」
  ――真名を奪われたら死ぬと言っていたのはお前だろ

……そう、確かに洩れたのが俺だけだったならそうしただろうが。
俺が死んでも、あいつらは解放されない。

  ――だが、他のメンバーは既にあいつの手の中だ。
「助けたい」

ただ、それだけだ。
真名を奪われたあいつらを助けたい。
けれど行動を起こしてしまえば、命を奪われてしまう気がしてならない。

影はため息をついて、朧気だった姿を明確にしていく。
それを横目で眺めていれば、信じたくないものに変貌していった。

「全く、直接言わないとダメなの?」
「でぃ、い」

冷たく俺を見下すその姿は紛れもなくD。
ああ、やはり気付かれていた。
疑惑が、確信に変わってしまう。

「ボクは君が大嫌いだ。だから死んでくれない?
 そしたら彼等に手を出さないって約束してやるよ。ボクの名にかけてね」
「――れが、きらい?」

たった、それだけなのか?
それなら、最初から俺が自分に刃を向けていればそれだけで。

「本当、だろうな」
「あぁ、ボクはマスター達には手を出さない」

だから今ここで君自身をその剣で貫け、とそいつは囁く。
壁に立て掛けてあった剣を抜き、ぼうっと眺める。

「――簡単なことだろう?」

耳元で囁かれるそれに、逆らう意志が湧かない。
それどころか、言われた通りに死ななければと思考が一杯になる。

胡座をかき、自分の首に剣の刃を宛がった。
ひんやりとした鉄の感触に、心臓が暴れだす。
けれど心はやけに落ち着いていて、生を望んでいるのはこの身体だけだった。

目を閉じ、剣を首から微かに浮かせる。
後は、手を離せば重力にしたがって倒れるこの重い剣が俺の首をかっ斬るだろう。

――そうすれば、みんな、たすかる。

手を離そうと、力を抜いた。
途端にバランスを崩す、大剣。




その瞬間に耳に入った窓を叩く音にハッとした。
倒れそうになった剣をなんとか押さえつけ、窓に急ぐ。
この音は、そう。

「……よく来たな」

雪鳥を部屋に招き入れ、振り向く。
そこには、誰もいなかった。

「……あれは、現実か? それとも、幻覚か?」

答えは返ってこない。
最近幻聴や幻覚を見てしまうほど追い詰められてはいる。
幻覚かもしれないが、現実かもしれない。
俺にはもう、区別がつかないが。

雪鳥から手紙を受け取って、開いた。
微かに乱れた筆跡に、思わず苦笑いを浮かべる。
何をこんなに急いでいたのやら。けれど、それでも。

「……命拾いしたぜ、シェザ」

薄く赤い線が浮かぶ首を押さえ、手紙の主を想う。
あと一瞬遅ければ、愛剣が深々とこの首に食い込んでいただろう。

「さて、どうやって隠したもんかね……」

手紙の内容は、帝都市外への招待状。
今呼び出す理由は、あいつの部隊のことかそれとも俺のことか……
恐らくは、後者。日々酷いことになっているのは自覚しているし。

春先用のタートルネックを引っ張り出して着替える。
あまり好きではないが、この戦闘ではありえない場所の傷を隠すには最適だろう。
見つかれば何を言われるか分かったものではない。

――隠し通さなければ。
未だ、確信らしきものは無いがそれでも。
外部に漏らすことで、あの吹雪の日の惨状がここに訪れる気がしてならない。
それだけは、何が何でも避けなくては。

手早く荷物を纏め、微かに付着した血液を剣から拭い去ってから鞘に収め、背負う。
帝都に行くくらいなら、武器は要らないけれど。
何故だか今、こいつを身から離すのが嫌だった。

書置きを酒樽の上に残し、雪鳥と共に窓から外に出る。
今から向かうと、それだけを書いた紙を足に括って雪鳥を飛ばした。
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