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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:D】

――ああ、なんと言うことでしょう。
紫竜は、私たちが棄てようとしているこの世界を救おうとしているの?
でもあの竜は異端のお方。
きっと、また無断での気紛れでいらっしゃるのでしょう……

拍手


+ + + + + + + + + +


一点の染みもない真っ白い空間。
上も下もなく、ただそこに浮いていた。

「――ぁ」

声を出そうとしても、零れるのは吐息のみ。
身体はぴくりとも動かない。

――思い出せ。
思い出せ、ここはどこで自分はなんなのか。
いったい何故自分はここにいる?
順を辿って思い出せ。

まず、ここは……牢獄。
神や精霊のその力を封じ、全てを奪い去る光の揺りかご。
……けれど、自分は神でも精霊ではない。

ならば、自分はなんだ。
ここに囚われてしまうまでに、強い力を持つ何かなのだろうか。


 “ティーアン、貴女は一体何を考えているのです”
 “だって、もう私は勝てないじゃない。
  ならあの子にあげてしまえばいいのよ。
  だから貴方に力を渡す理由も無くなったわ、長い間お疲れさま”
 “冗談じゃない、貴女はその意味をちゃんとわかっているのですか!?”
 “分かってるわ、お姉様達もそれで良いと仰っているもの。
  貴方が一番知っているのではなくて?
  私達はずっと昔から手に余していたのよ、丁度良い機会だわ”


突如甦ってきた、金の瞳を持つ女性とのやり取り。
彼女は我らが世界『カルバス・トゥ・ドラク』を創り上げた神々の内の、一柱。
生命の聖火を以て、命を生み出した女神。


 “貴女は勝手だ、あの時ボクを2つに割らなければ勝機もあったでしょうに”
 “ええ、それは後悔してるわ。少なくとも、向こうに感情を残してあげればよかった。
  そうすればもっと簡単に状況だけで潰せたのに”
 “……そして、新たな絵をお描きになるのですか。今ある命を全て見限って”
 “ええ、次は人間は描かずに描き上げて見せる。竜の望む楽園を”


それは、そこに住まう命を考えていない言葉。
ああそうだ、ボクは。


 “……ならば、ボクとの契約を破棄してください。飼い殺しはうんざりだ”
 “嫌よ、貴方がもう2度と現世に干渉する事は許さない”
 “意地でも、戻る”
 “……そう”


それから、既に力らしい力を失っていた自分は捕らえられ、ここに入れられた。
光の揺りかごは、眠るように存在を消滅に導く牢。
このままでは直に、全てを失ってしまう。

どうにか脱出しようと、動けと身体に命じてもぴくりとも動かない。
そもそも、感覚が無い。
今見ている光景でさえ、真なのだろうかと勘繰ってしまう。

「――!!」

遠くから、声が聞こえた。
それと同時に、この空間を生み出した張本人が揺らいで枷が緩むのを感じ取った。

「――!! ―――!? ――――、―――!!」


白を裂いてその場に現れたのは、紫の――


「――紫苑」
「D、助ける、約束した。竜、約束、絶対」
「いいの? 運命捻じ曲げて」
「……見なかった、決めた。見てない」

白が、紫に変化していく。

「だって、D、ヤンディ、居なくなる嫌」
「……それでいいのかなぁ」
「いい」

空の器に満たされていく、確かな力。
愚かな女神に繋がれた鎖がほどけてゆく。
それと同時に甦る、封じられていた“きおく”たち。

空間が紫に移り変わった。
ボクはもう、鎖に繋がれた玩具ではない。
彼女の人形ではなく、理に縛られた聖霊でもなく。

「――ありがとう、紫苑」
「D、友達仲間助ける。……絶対」
「あぁ、必ず」

やるべきことはすぐにわかった。
ああ、色濃い闇は忘れてなどいなかった。
ならば、ならばこれで終わるのだろう。




もはや、ボクたちに争わなければいけない理由は無いはずだ。
“あなたに授けよう”
歪に絡んだ運命は、あるべき道へ。
“私が見た運命を覆すだけの力を”
ボクがかつて人間として望んだことは
“異端と言われる竜の私が望んでいることは”
―― 全てが手を取り合える、そんな世界 ――
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