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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ケルト】

遠い、遠い夢。
死の神の手が、首を締め上げる。

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「よしよし、さすがヤンディだな」
「やめてよ、これくらい簡単なんだからぁ」

見えないように、拳を作る。
そうだ、いつだって。何をしたって先にあいつが褒められる。
理由は分かりきってるけど、でも悔しかった。

勉強の出来も、いざというときの冷静さも。
罠を解除するのも、設置するのも。
宝を見つけ出すのも、奪うのも。
泳ぎも、足も、心の強さも。

この腕っぷしの強さくらいしか俺はあいつには勝てない。
けど、この強さだって俺だけが剣を教わってるからに他ならない。


――俺は、全てにおいて弟より劣っている。


いつだってそう。
俺はあいつに助けられてばかりで、きっと父さんも呆れてる。

だからあいつに勝とうと思って色々やっても、
坊っちゃんはやらなくていいからと周りに止められる。
あいつが同じことをしようとしても、誰1人として止めないくせに。
それであいつが成功して、俺は置いていかれるだけで。

くしゃりと髪をかき混ぜられる感覚に、びっくりして見上げる。
いつものように笑っている父さんがそこにいた。

「お前も、よく頑張った。前よりも出来が良くなってる、成長したな」
「……おう!」

にっこりと笑って見せたけれど、心の奥で黒い何かが動き回る。

「よーし、夕飯にするから手ぇ洗ってこい!」
「はーい、行こうにいちゃん」
「だな、夕飯なんだろーな!!」
「しらないよ」

終始無表情のあいつの後について歩きながら、黒い靄を払おうとしてみる。
けれど、それは大きくなるばかりで。

「ね、バレないって言ったろ」
「……そうだな」

今日の課題は、小さなおもちゃを作ることだった。
当然、俺が作ろうとしたところでまともに動くはずがない。
こいつの手を借りて、なんとか動くようにした。
……それはダメだって、言われていたのに。

俺が褒められたんじゃない。
認めて貰えたのは、こいつだけだ。

「ケルト坊っちゃん!」

後ろから声を掛けてきた男の姿を見ると、
あいつは小さく先に行ってると言い残して行ってしまった。
俺はこの男を、あいつの数少ない理解者だと思っているのにあいつはこいつを避けていく。
この男――ミナトは俺たちをよく見てくれる人なのに。

「坊っちゃん、聞いたぜ。初めてちゃんと動くの作れたってな」
「おう、なんとか」
「ここまで長かったなぁ、その感覚忘れちゃなんないぜ」
「うん」

心が黒く塗り潰されて、やがて何も見えなくなる。
まるで闇の中に放り込まれたような――

「――や、み?」

少しの間を置いて、これが夢だと気が付いた。
そう、あれは。今のはまだ10になったばかりの頃の記憶。

そう自覚した途端、様々な感情が押し寄せてくる。

妬み、恨み、嫉妬、そんな枠には収まりきらない劣等感。
重くて、苦しくて、痛くて、息が出来ずにもがく。
それでも色濃い闇が、負のそれが全ての意思を絡め取って壊して行く。



――そして、いつの間にか何を考えることも、動くことも、呼吸さえもできなくなった。
ただ、感じられるのは終わらない苦痛と、眼前に広がる黒だけ。
やがて、意識が完全に溶けて、消えた。



「――! ――! 起きろ! そのままじゃ連れてかれるぞ!!」
「――ィ」
「息吸って、とにかく呼吸しろ!!」

なんだか、ヤンディの奴が必死に何かを言っている。
聞こえているはずなのに、内容が全く理解できない。
何かに痺れを切らせたのか、ヤンディは俺の胸を強く押し――

「――はっ、がっぅ、は、はぁは……」

空気の出入りする苦しさに、ようやく自分の呼吸が止まっていたことを理解する。
それと同時に、身体を動かせない程の倦怠感を覚えた。

「間に合ってよかった……今君、死神の悪夢に完全に呑まれてたんだ。
 ……あいつ、何考えてんだ。耐性無い奴に見せたら死にかねないってのに……っ」
「しに、がみ?」

声を絞り出し、問う。
最近ずっと大人しかったあの神が、なぜ俺を狙った?
以前のように、ヤンディを芋づる式に堕とそうとしているわけでもなさそうなのに、何故。

「……ケルト、何を見せられたかは知らないけどゆっくり休んで。
 君、これ初めてだろ? 気力も体力も全部持っていかれてるだろうから今日は1日安静にね」

返事をしようにも、今度は声が出なかった。
仕方なく、小さく頷くだけに留めたが、ヤンディはそれで満足なようだった。

「……一応、ちゃんと説明しておくぞ。
 それは死神の奴が闇を人間に植え付ける術だ。
 今回君は、深いところまで引きずり込まれて危うく死ぬところだった。
 ついさっき死神の気配に気付いてね、無理矢理君の意識を引き上げたって訳。
 ……身体が重い他に何かあるかい? 吐き気とか頭痛とか」

緩く首を横にふって見せれば、ため息を吐いてあいつは扉の方に歩いていった。

「……油断大敵って事だね。いいかいケルト、間違っても死神の言葉に頷くなよ」

それだけを言い残して部屋を出るヤンディを見送って、深く息を吐く。
あいつがあれだけ必死になっていたと言うことはつまり、
同じ目に遭ったことがあるのだろう。
これを、もう20年近くも。

「……」


――あいつには勝てない。


動かない身体に鞭を打って体勢を変える。
あれは夢だと、死神の思う壺だと分かっていても叩き付けられる事実。

あいつは強くなった。
あいつより優れていたと思っていた力も、人との繋がりも、決断力も、行動力も。
よくて同等、ものによっては俺より遥かに優れている。

それは、知っている世界の差だろうか。
知っている物事の差だろうか。
知っている環境の差だろうか。
受けてきた待遇の、背負った運命の差だろうか。
それとも、持って生まれた才能からしてあいつの方が上だったのだろうか。
どれだけ足掻いても、結局俺は。

ぐるぐると思考が廻り、落ちる。
こんな状況で眠りたくはない。
けれど、襲ってくるそれには勝てずに沈む。

……完全に意識が消える、その一瞬前に見えた、あれは一体。



―― 女神の印が刻まれた、光の剣と、盾。
   それのどちらも大きく欠けて、使い物にはなりそうになかった
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