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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【メイン:全員】

三女神への祈り。
黄金の下で確かにそれが行われたのは初めてだった。

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Dの力で黄金を乗り越えて半日。
女神の誓の面々は、再び幕を開ける戦乱に向け準備を整えていた。

「なぁ姫、スカッシュちゃん」

そんな夕飯時。
不意にケルトが切り出した。

「Dが来てからずっと考えてたことなんだけどよ」
「なぁに?」
「部隊、縮小しねぇか? 今までは手続きしてまで4人で来たけどよ。
 男が3人いるんだ、これからは俺とヤンディとDで戦うべきだと思う。
 今までは立ち行かねぇとか誰がダウンしたとかで出てもらってたが、
 やっぱり女の子を戦場には出したくねぇんだよな」
「えーっ!?あたし留守番!?」
「……おいらは別に反対しないぞ、姫さんの負担が減るだろうしねぇ」
「研究や家事に集中できると考えればやぶさかでないが……」
「ボクも構わないけど大した力にはなれないよ?」

それぞれが、それぞれの反応を示す。
不満そうなスカッシュに心配そうなクムン。
そして、好きにしろとばかりのヤンディと小首を傾げるD。

「嫌よ留守番なんてー!!」
「……おちび、ちょっと考えてみておくれよ」
「ふえ?」

駄々をこねるスカッシュに、ヤンディが口を挟む。

「控えに何人かいてくれたほうが融通が利いて助かるんだけどな。
 誰かが戦えなくなっても、君と姫さんが控えに居てくれてれば穴を埋められるだろぅ?」
「むむむ……それはそうだけど……」
「それじゃ、決まりだな。ヤンディ、傭兵組合は頼んだぜ」
「はいはい……あ、それおいらも飲みたい」

しかたねぇなぁと差し出された酒瓶をヤンディが受けとる。
そこで、ケルトの腕をみて怪しむような視線を送った。

「ちょっと、その腕どうしたの?」
「どうしたって、見ての通りテーピングだぜ?」
「珍しいな、お主がそのようなこと」

がしがしと頭を掻いてから、手首から肘にかけてテーピングされている腕を見せるケルト。

「それがよー、さっき剣を振ってたら捻りそうになっちまって。
 今の時期に怪我したら辛いだろ?
 だから勘が戻るまで暫く固定することにしたんだ」
「ふむ……怪我はしてないのだな?」
「ああ、これはあくまで予防だ。心配要らねーよ」

ひらひらと手を振って、何ら問題ないことを悟ると、それぞれが食事に戻る。
暫く他愛の無い話に花を咲かせていると、
いきなりスカッシュが席を立ち、キッチンからプチケーキを持ってきた。

「危ない危ない、すっかり忘れるところだったわ」

そう言いながら、新しいグラスを人数分用意しシャンパンを注いでいく。
全員に配り終えた所で、にこりと笑ってスカッシュが口を開いた。

「今回も全員生き残れます様にってお祈り。
 全員揃って、ちゃんとやるのは初めてじゃない?」
「そういや、1回目は慌てすぎてそれ所じゃ無かったか」
「……2回目の時はおいら閉じ籠ってたしな」
「前回は我が祝詞を述べただけか」

余程意外な言葉だったのか、Dが首を傾げて問う。

「あれ、意外とみんなお祈りしないんだ?」
「個人ではしてるんだけど……こうも別れてるとなかなかねぇ」
「細かい礼法とか祝詞とか違うからな、全部揃えなきゃなんねぇし」
「全員揃って尚且つとなるとなかなか時間が取れんのだ」
「――贅沢な悩みだな君ら」

急にむすっとしたヤンディをDが宥める。
死神の異様な加護を受けているヤンディには縋れる女神がいなくなってしまった。
本人は相当気にしているようで、正直禁句の域である。

「で、でもほらマスター、ボクとか紫苑とか!」
「……正直、どっちもかなりやりにくい。近過ぎて」
「うぐ……と、とにかく! せっかくだからみんなで、ね?」

勝手にすればとプチケーキを手に取ったヤンディを傍目に、ケルトが聖印に青い光を灯す。


「――何者をも抱く母なる乙女、我が主たる長女神よ。
 安息の日を求め、戦いに明け暮れる我等に確かな祝福を」


続いて、クムンが静かに祈りを捧げると柔らかな緑の光が辺りに零れる。


「戦の勝利を齎す戦の乙女、我が主たる次女神よ。
 我等の日常を侵すかの敵に神罰を。我等に勝利の確約を」


ちらりと心配そうなクムンの視線をよそに、スカッシュが珍しく真剣な表情で手を組む。
首から提げた聖印が赤紫の光を放ち、静かに輝いた。


「……自由を信条とす気高き乙女、我が主たる末妹神よ。
 我等に確かな灯火を。決して汚されぬ自由をここに。
 ――いかなる道を歩もうとも、我等に道を示したまえ」


あまりに真剣なスカッシュを見てヤンディはため息を吐き、
首に提げていた五芒星にそっと触れて、やや棒読み加減で声を発す。


「定めた運命を流転させし異端の神よ。
 我等に降りかかる災いを振り払え。汝が主たる竜と王の名の元に」


本当に小さく「無理なのは知ってるけど」と落とされた呟きにDが苦笑いを浮かべる。
肯定も否定も無いままに、ケルトが続けた。


「まぁ、とにかくだ。
 ――我等に三女神の加護あれ。黄金の遊戯を生き抜く為の加護を!」


三色の光が交わり、消える。
それこそ祈りが終わったという合図。

スカッシュはグラスを手に取ると、にっこりと笑って掲げた。
それに倣って全員がグラスを掲げる。

「それじゃ、男性陣は頑張っちゃってよね!
 あたしも裏でみんなのサポート頑張るからっ!」
「背は気にするな、守るものは確かに守って見せよう。
 ……では、黄金が再び寄せた時全員が揃い杯を交わすことを祈って」

乾杯、とグラスがなって日常に戻っていく。


既に5度目を数える黄金の遊戯。
微かな不穏を抱えつつも、彼らは再び戦い始める。
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