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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ヤンディ】

嫌な予感がした。
とても、すごく。

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部屋の扉を閉めた途端、後ろから声が掛かる。


「話を付けるじゃと?」


振り返らなくとも、笑っているであろう事が分かった。
こいつはいつだってそう。
全てを分かった上で嘲笑う。
くるりと振り返れば、鎌に座って浮いている死神がいた。


「……暫く、夜中に来るの辞めてくれないかい」
「そうじゃのう……」


考える振りをしても、答えはわかっている。
そのわざとらしさが頭にくるのだ。


「嫌じゃ。良い時間つぶしを手放してなるものか」


ため息を吐く。
単なる話し合いで解決するわけがないのは重々承知。
こちらから求めるならば、差し出すものも当然用意しなければならない。
あまり褒められた事ではないが、それでも。


「冥界の王イサスベリ、この件に関して正式な契約を申し込みたい」
「……お前がそこまで言うとはのう。冥界に小娘共でも攻め込んでくる前兆か?」
「バカにしてる?」
「うむ」


……いや、まぁ、言いたいことも分からないでもない。
こっちから持ちかけるのは初めてだ。
というか、今まで突っぱねてきたのだし。

けれど最近、やけに胸騒ぎがする。
先ほど届いた手紙だけではない、他にも何か見落としているような気がしてならない。

何かあってからでは遅い。
何か起こる前に、最悪何か起こってしまったとしてもすぐに対応できるようにしておきたい。

けれどそれは、このままでは出来ない。
こんな、まともな思考が出来ない状況で何が出来ようか。


「多少無茶な対価でも受け入れる気でいるんだけど」
「全く、こちらに来てからと言うもの変わったな」
「そうかい?」
「昔は契約なぞ死んでもせんと言っておったろうに」


そういえばそうだったなと、思わず頬を掻いた。
でもあれは。


「昔は速攻で魂喰う気満々だったじゃないか」
「……それもそうじゃな」
「で、対価は?」
「そうじゃのぅ……」


ふわりとその辺りを飛ぶ死神を目だけで追う。
いくらなんでも、そこまで桁外れなものは要求してこないだろう。


「要は、戦の時は力を貸しつつ夜中に来るなと」
「まぁそういうこと」
「……なれば、この契約が有効な間、毎朝お前の魔力の上限半分を貰い受けよう。
 これくらいが妥当かの。そも、お前の魔力は微量じゃが」
「……若干死活問題だけどまぁ仕方ないか。その条件を飲むよ」


にたり、と死神の口元が釣り上がる。

刹那。

部屋を闇が覆い、自分と死神以外のモノが視界から消えた。
そして赤黒い魔方陣が自分たちを中心に展開される。


「……血はやらないぞ」
「警戒心が強くて結構。今回はそこまで要求せぬよ。
 ――“冥界の王にして死を司る、冥魂神イサスベリがここに人の子と契る”」
「“流転の加護の下、ディフリーヤの真名に契りを刻め”」
「“この契り、我が意思では破棄せぬ事を黒竜に誓う”」
「“提示されし対価をこの身を持って支払うと紫竜に誓う”」


闇が弾け、魔方陣も消え去る。
眩しさに目を細めればそこは元の自室で。


「契約、完了じゃ」


笑う死神に、ため息しか返せなかった。
ついに自分の意思でこいつと契約を交わしてしまったことが酷く重くのしかかる。


「……しかしまぁ、お前は昔から死や不幸を感じ取るのが実に上手いのぅ」
「は?」
「こちらの話じゃ、ではの」
「ちょ、詳しく聞かせろ!!」


呼び止めるよりも早く霧となって消えた死神の言葉に、胸騒ぎが大きくなる。
わざわざ、あいつが言い残すなんて。



「……何、を」




自分は一体、何を見落としているって言うんだ。
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