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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ケルト】

茨が蝕む。
けれど、どうしてもたった一言がいえない。

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しっかりと扉を閉め、施錠魔法を掛ける。
そんな事をしなくても誰も入ってこないだろうが、念のためだ。

上半身裸になりテーピングを外すと、スカッシュちゃんが持ち込んだ鏡に全身を映す。
緑とも紫とも取れる細い茨のような呪印は、確かにこの身を蝕んでいた。


「……」


左腕の呪印をそっとなぞりながら思う。
最初は両手首だけだった。
やがて肘までを這い肩に達し、今では首から下と腰まで至る。
まるで茨が大地から養分を吸い上げてその蔓を伸ばしていくように、日々広がって行く。
……その根は、この身に張られているのだ。

進行度合いを確認したところで服を全て脱ぎ、浴室に入った。
シャワーを頭から浴びたまま、思考を巡らせる。

ヤンディに話してみようか。
呪いやら解呪やらに一番詳しいのは間違いなくあいつだ。
俺にあの剣を渡したのもあいつ。何か知っているかもしれない。

……だが、ちょっと待て。
茨の乙女が敵とするのは闇。それから死神。
ここで頼れば、呪いがあいつにも飛び火してしまうのではないか。
ただでさえ、あいつの後ろには死神がいる。
それに今あいつは別件で手一杯のはず。負担は増やしたくない。

かといって、女性陣に話すわけにもいかないだろう。
茨の乙女はそろいも揃って嫉妬深い。
Dも女神達に黒判定されているらしいし、無事で済むとは思えない。


「……まず、は、あいつ、に」


あいつに打ち明ければ良いのだろうか。
1人で悩むなと、かの親友はよく言ってくれるが。
……言ってくれるが、なんと切り出して良いかが解らない。


――なんて、情けない。


彼なら……いや、彼に限らずとも助けさえ求めれば
手を差し伸べてくれることくらいいい加減理解している。
けれど、今まで必死に隠し通すことしかして来なかったから。
強がって無かったことにしかして来なかったから。
昔はあれだけ、人に助けを乞う声を上げろと言ってきたというのに。


『助けて』と、ただそれだけの実に短い言葉を。
『怖い』と、今を表すほんの一言を。




――どうして俺は、声に出来ないんだ。
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