英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
+ + + + + + + + + +
突然、衝撃が来た。
結界に、強く何かがぶつかった。
――見つかってしまった?
いいや、それならばケルトがここまで穏やかに眠っては居ないだろう。
なにが、何が起きた。
「くっそ……!!」
ただひたすらに神の力を組み上げる。
こればかりは人の力を行使したら全てが失われてしまう。
何か無いか。咎められず、中のことを知れる術は!
思考を巡らせる内、眠る2人の指輪が目に入った。
そう、今彼らは全員ボクの守りの中に居る。
ならば、あの結界術に更に術式を加えたら……?
「――……」
人の耳では捉えられぬ言葉を紡ぐ。
妖語・精語・霊語・神語……魔を紡ぐために必要な知識は全て頭に入っている。
これら全ての要素を絡ませ、さらに竜の言葉を紡いだならば?
視界の端で紫が踊る。灰はほんの少しでも混じってはいない。
――覚悟を、決めろ。
一瞬の暗転。
だけれど全てをここに投げてはいけない。
そんなことをすれば、全員の魂そのものが消えてなくなる。
現実に多くの物を残し、あいつがつけているであろう指輪を辿った。
目を閉じ、開ければ。
姿こそ見えなくとも懐かしい気配を、確かに感じ取れた。
「――バーカ、何で来たんだよ」
「……自由を貫けって、そういったのは君だよ」
「心中する気かお前」
「――大丈夫、絶対に誰も傷つけない」
ボクの守りをつけている限り、絶対に。
彼に会いたいと願ったのは、紛れも無くボクなんだから。
ボクの我儘で、誰かを傷つけることはしたくなかった。
そんなことを考えていたら、背後でため息が零れた。
きっと気がついたのだろう、ボクがどんな手段を使ったのかに。
「……同化させるバカがあるか」
「さっきから酷いなぁ、バカとしか言われてない気がするんだけどケイル」
「けっ、お前はどれだけ経とうが俺のクソチビだからな」
「……これからは、ボクが守るから」
そう、人間として生きていた間は守られてばかりだった。
だから、守りたい。
こんな残酷な闇の中で独り放っておくことは、できない。
座っていたケイルが、唐突に立ってこちらを向いた。
指から外されたそれを見て、血の気が引く。
「ば――っ!! 早くつけろ!!!」
「……お前が俺に縛られるくらいなら、俺はここでずっと眠ってる」
結界が、綻び始めた。
「お前が諦めたときが、俺の消失なんだよクソチビ」
「え――」
突き返された指輪を、思わず受け取ってしまう。
「俺は忌々しい神連中と契約を交わした。
――混沌の世となるか、望む世となるか、その目で確かめろ」
闇が、ケイルを捕らえて引きずり込み始めた。
必死に手を伸ばしても、意識の破片でしかないこの状態で触れることはできない。
「覚えておけD。俺はお前がお前の望む世を作り出せると信じてる。
だからこそ、俺は神共を相手にして、お前に俺自身を掛けた!
お前なら絶対に、竜の望む世界にできる。その日まで絶対に諦めるなよな」
くるりと身体の向きを変えられ、背を押された。
現実に引き戻される感覚に、なんとか抗おうと身体を捻る。
「――ケイル!!」
「またあおうぜ。お前が、お前の望む日を作れた時に。
……その時は、一緒に還ろう。あるべき場所によ」
闇に囚われ、消えるその姿に必死に手を伸ばす。
けれど届かず、伸ばした手が解けていってしまう。
「……待ってる、いつまででも永遠に」
どこか寂しげな声を最後に、全てが暗転した。
PR
最新記事
(04/29)
(04/29)
(04/29)
(04/29)
(04/29)
ブログ内検索
プロフィール
HN:
ティス
年齢:
29
性別:
女性
誕生日:
1994/05/10