【視点：ヤンディ】

あいつと一緒にいたくなくて、ギルドまで逃げてきた。

きっと、時間が変わればここの顔ぶれも変わるのだろう。
だからこそ、今という時間を大切にしたい。


※第7期、【黄金の雪原】に所属していた各部隊長さんのお名前をお借りしております。

窓の外で雪がちらつく。
燃え盛る暖炉の側では、本来なら夏に咲く筈の向日葵が咲き誇る。
もう何代も重ねた花が、その種を実らせる度に喜ぶギルド員を思い出した。


「……」


暖炉の近くのソファーに寝そべり、広間に視線を泳がせる。
とても、とても賑やかになったものだ。
歓迎会の時の、倍近くにはなったはず。
それだけのひとが、このギルドを選んでくれた。

――自分は、彼らの支えになれているだろうか？
傭兵になって、もしくはこの世界に来たばかりのメンバーも多く居る。
かつて、自分を受け入れてくれたあのギルドのように……
そんなギルドに、出来ているだろうか。

思わず笑みが零れた。
ああ、なんて柔らかい考え方が出来るようになったのだろう。
他人を考え、少しでも力になりたいだなんて。
昔の、この世界に来る前の自分が今を見たならば甘いとでも鼻で笑うだろうか。
それとも、闇に染まった状況に憤慨するだろうか。


「……ま、どうでもいいか。昔の事は」


英雄たるスルギ。勝負師シエル。双砲銃を操るアゼル。
植物を愛すパレアレル。医者兼研究者ソル。己を探すユリ。
人の手により生まれたヴィヴィー。悪魔学の権威ジャック。
魔術師FUTABA。火精を使役する胡桃。謎の多いレヴィア。
母を抱くアストリエ。他者を癒すターニア。冷静沈着なクロフォード。
楽しみを追求するヴェルデ。お気楽なおちゃ。子持ちのサンタ。
そして……我が親友、テンコ。

ざっと、部隊長だけをあげてもこれだけ居る。
部隊員の数はそれぞれまばらだが、確か19部隊が所属していたから、ええと……


「57……は、いなかったな。何人だっけ……」


単純に3を掛けてはみたが、流石に少し多い。
55人いかない位だったはず。


「――……」


英雄戦と呼ばれる戦は終わった。
まだ終戦とは言えないが、それでもそろそろ落ち着いてくる頃合いだろう。
前回は、確か鍋パーティだったか。
今回もそろそろ何か用意してみよう。


「……何がいいかなぁ」


あの子をけしかければ用意はしてくれるだろう。
もちろん手伝いはするが、お祭り好きな子だから。


「――焼肉なら、みんな食いつくかな」


そうと決まれば、明日にでも買出しに行こうか。
日持ちするものから買い集めていかなくては。

帝都に行って買い物して、久々に拠点に戻ろう。
あの子をけしかけたらまたここに戻ってくればいい。


「ふあ……」


一度大きな欠伸をして、目を閉じる。
――楽しくなりそうだ。