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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ヤンディ】

無事に大戦を終え、皇国へと戻る道すがら。
思い出させられた、北の思い出。

※天狐さん(1x90)のテンコさん、白花さん(29zm)のシエルさん、
  イクリプスクライさん(1peo)のエリアスさんをお借りしております。

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「別に1人でも良かったのに」
「でも何かあったら危ないやん」
「……んー、君時々おいらが盗賊の出って忘れてない?」
「えーっと……忘れとらんよ?」

対セフィド戦。
無事に目的を果たし、退路を確保すべく本隊を離れて偵察に出ていた。
最初は1人でと思ったのだが、自分も体力残ってるからとテンコもついてきていた。
これからオーラムを経由してイズレーンまで戻らなくてはいけない。

「――テンコ、下がって」

少し遠く、微かに葉の鳴る音が聞こえた。
木の影に隠れて、先の様子を窺う。
向こうも警戒しているらしく、それ以降の音はない。

「……どっかの、部隊やろか」
「さてね……1人、と見たけど」

本隊から離れた斥候の可能性が高い。
自分達と同じように、味方の安全を確保するための。
長く続く緊張感。
さっきまで普通に会話してしていた事を悔やむ。
それが切っ掛けで存在がばれたとしたら、酷い失態だ。

先手を打つ、と合図を送ってゆっくりと進む。
音を立てないよう気配を消し去り、そして相手の背後に――

「――!?」

思わず、動揺が走った。
ああでも、確かにここにいてもおかしくはない。
その人物だって、間違いなくあの国を支える部隊長の、1人だ。

「……気配を乱しちゃいけないんじゃなくて、ヤンディさん?」
「――しまったなぁ、帝国の英雄部隊が近くにいたなんて」

抜きかけていた短剣から手を離す。
幾度か戦場で見た顔だ。
――そして、かつての仲間だ。

「やぁシエル、偵察かい?」
「言うわけないでしょ、一応、敵じゃない私たち」
「はは、違いない」

彼女に気が付かれぬよう、出てくるなとテンコにサインを送る。
彼女は記憶持ちだし、もうとっくに気が付いているだろうが、
それでも“テンコ”は死んだことになっているのだ。

「テンコさんは?」
「え?」
「さっき話していたでしょう? テンコさんも隠れてるんじゃない?」
「あー……」
「――別にええよ、でも俺はテンコやのうて黎矢や。どうぞよろしゅうシエルさん」

かさりと軽い音を立てて、テンコが茂みから出てくる。
それを見て、そう言うことにしておきましょうかと小さく笑うシエル。
少し頭が痛くなってきた。どうにかして、帝国の部隊と鉢合わせしないようにしなくては。
その為には彼女と話を付けるのが一番だろう。

「ねぇ」
「そうだ、貴方達に、特にヤンディさんに言いたいことがあったのよ。
 戦場では落ち着いて話もできないから」
「……何?」

話を遮られ、彼女と対峙したときが思い出される。
いつも、いつもだ。待っているからと、そう言って貰える。

「こんなに時間が経ってから言うことでもないかもしれないけど……
 なんで何も言ってくれなかったのかしら?
 テンコさんが居なくなった時期的に、彼にも何も言わなかったんじゃない?」
「それは――」

その通りだ。
自分と交流があると、あいつに知られたくなかったからこそ誰にも言わず皇国へ下った。
それを否定することはしないし、むしろバカだったかなぁとは思い始めている。

「相談出来ないほど、私達は頼りなかったかしら。そんなに信用が無かったかしら?」
「そんなことないよ、話せない、事情が……」
「事情? それは話したら貴方達に危害が及ぶような内容なの?」
「な、なぁシエルさんその辺に……」
「テンコさんは悪いけど黙ってて!! これは貴方にも当てはまることよ!」
「う……」

テンコが隣でしゅんとなったのを見る。
こっちに来てからすぐテンコにも言われた内容だが、やはり重くのし掛かった。
あの時は良かれと思ってやったことだ、けれど心配を掛けてしまったのだろう。

「……ごめんよ。あの時は話したら君たちが危ないと思ったんだ」
「私達が、いったいどれだけ心配したと思ってるの?
 まだヤンディさんだけとか、
 それかテンコさんも部隊ごと移動してたならそんなに心配しなかったわよ。
 この世界、巻き戻れば所属の変わる部隊なんてたくさんいるし……」

ぐ、っと彼女の拳が握られる。
その表情は確かに怒りも浮かんでいるが、心配の色も見えた。

「でも、でもテンコさんの訃報を聞いたときにはどれだけ苦しかったか!!
 確かに後で戦場で見かけて、納得したわ。
 ヤンディさんを追いかけて行ったんだってすぐに分かった。
 けれどどうして2人ともそうまでしなくちゃいけなかったの?
 それともあれ? 2人で帝国飛び出して、らぶらぶ旅行?」
「……最後は全力で否定するよ」
「あら、でも結構楽しんでるって噂を聞くわ。
 あんなに長くいた帝国より皇国のほうが良いのかしら!」
「それは――」

帝国での時間も、皇国での時間もとてもいいものだった。
故に否定できない。
皇国での生活は本当に自由で、楽しいから。
――あいつがいる帝国に比べれば、ずっと。

言葉に詰まった、そのすぐ後。
高い音と一緒に、左頬に衝撃が走った。
少し間を置いて熱を帯びたそこを触れる。

「――わかったわ、もう何も言わない」

呆然としたまま、視界の端で目を大きく見開いているテンコを捉えた。
そして何より、驚いたのは彼女が次に見せた笑顔。

「叩いてごめんなさいね、痛かったとは思うけど……でも、心配かけたのはそっち。
 なんで帝国を出たのかはわからないけど、落ち着いたらちゃーんと帰って来なさいよ?
 必要なものがあれば用意するし……
 ギルドだって、2人がいつでも帰ってこられるようにしてあるわ」
「――ギルドも?」

黄金の雪原。
確かに同名のギルドが立っていることは知っていた。
でも、まさか、自分達が帰る余地があるとまでは思っていなかった。
あそこに属すという部隊もまた、少し変化していたし。

「ええ、もちろんよ。だってヤンディさん、貴方がマスターでしょう?
 だから絶対いつか帰ってきて。
 じゃないと国中に言いふらしちゃうわよ、2人はらぶらぶ新婚旅行中って!」
「げ、それは全力で否定するし止めてくれ、あとでテンコに説明するのも骨が折れる!」
「え、俺? ヤンディと俺は男同士やし、
 結婚もしてないから新婚旅行って言うのは確かにおかしいなぁ。
 でも旅行っぽいことしてるのは確かやし、そこだけならええんと違う?」
「――あー、うん……なんかもういいや……」

思わず頭を抱えると、くすくすと控えめな笑い声が聞こえた。
変わらないようで安心したわ。そう言ってから、シエルは声を落とした。

「……ね、ヤンディさん、テンコさん。
 帝国の英雄部隊はこの後北東へ進むわ。
 南側のルートを通ってもらえれば、少なくとも帝国とはぶつからなくてすむ」
「――いいのかい、そんなこと言っちゃって」
「だって、信じてるもの2人を。それじゃ、私はそろそろ戻るわね」

踵を返し、北へと向くシエル。
少し進んだところでくるりとこちらをむいて、変わらぬ笑みで言う。

「そうだ、忘れてたわ」
「何?」
「遅くなっちゃったけど、いってらっしゃい。お土産楽しみにしてるわね」

少しずつ遠のくその姿を、小さなため息で見送る。
そっと目を閉じ、自分もまたくるりと方向を変えた。

「――戻ろう、テンコ。エリアスに進路変更を頼まないと」
「え、でも――うん。まずは、そうやな。……なぁヤンディ、大丈夫なん?」
「大丈夫だよ、これくらい……鼓膜はやられてないから」

部隊へと戻るこの短い時間。
それでもぐるぐると思いが廻る。

皇国は確かにいいところだ。
自然も豊かで、とても過ごしやすくて。
本当に亡命先をここにしてよかったと思っている。

けれど、帝国で彼女のように待っていてくれる人がいることも事実。
シエルだけではなく、テンコの部隊のメンバーや、
あいつ以外も帰りを待っていてくれるだろう。

「……テン――黎矢は、帝国に帰りたい?」
「そう、やなぁ……俺は――」
「あ、いたいたー! 偵察お疲れさまー。どうだった?」

遠くにエリアスの姿を見て、慌てて呼びなおすが、答えを聞く前に隊に合流した。
もう少しゆっくり歩けば良かったかなとも思ったが、なんにせよこの話は終わりだ。

「少し行ったところに他国の部隊がいた。
 ぶつかるのは得策じゃないし、別ルートをとった方がいいと思うよ」
「……そっか、分かった。みんなー! 少し遠回りになるけど第二ルート使って帰るよ!」

その一声で部隊は最初に予定していたルートより少し南を進路に取る。
これで向こうと鉢合わせすることは無いだろう。

隊の一番後ろ。
そこを自然に取って北の大地に思いを馳せる。

この3年、心配こそせず過ごしていたがそこに残してきた2人は元気だろうか。
あいつがいるならば絶対大丈夫だろうという確信もあるが、それでも時代が時代だ。
噂をまったく聞かないから、部隊としての活動は殆ど無いのだろうが。

それに、今まで大丈夫だったから大丈夫だと思いたいが彼の命はまだ燃えているだろうか。
命を燃して、確実に短くなったその蝋燭はまだ続いているだろうか。

「――ヤンディ?」
「ああ、ごめんすぐ行くよ」

いつの間にか立ち止まってしまっていたらしい。
まだ、もっとちゃんと考えなければ。

   ミナト
――あいつがあそこにいる限り、自分はあそこには帰れない。
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