英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。
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「なぁ、スカッシュちゃんの夢ってなんだ?」
始まった。
一向に進展しない会議らしいものにあたしも飽きてはいたけれど。
ずっと黙って眺めていたボスが突然話始めた。
「私の夢?」
「そ、スカッシュちゃんはこの戦いに決着がついたらどうするよ?」
ボスが関係の無い話をしだしたからか、飛び交っていた怒号がやむ。
これはただの無駄話か、それとも何か考えあっての話なのか。
皆が後者であることを期待して静かになる。
「そうねぇ……」
夢、夢……
将来なんて深く考えたことはない。
毎日を生きるのが精一杯で、未来の事なんて。
「ボスは?」
「俺はここでずっと、死ぬまで頭領やってんのが夢だな。
俺は実際にやった経験は無いが、盗賊同士の島争いとかやってみてぇな」
「なにそれ、今と変わらないじゃない。
国相手の陣取りゲームの規模がちっちゃくなっただけ」
「でもまだ平和だろ?」
けらけらと笑うボスにつられてか、回りからも笑いがこぼれる。
ああ、これがこの人の凄いところ。
「で、スカッシュちゃんはどうだ?」
「うーん、考えたこと無いわ」
だって、この戦いが終わるときに自分が生きている可能性なんてとても低い。
無事におわっても、その時は“アイシェ”に戻らなくてはいけない。
……どう転んでも、好きなように生きる道は無いのに。
「それでもなんかあんだろ?
こういう所に住みてーとか買い物行きてーとか」
少し、考える。
“スカッシュ”ならどう答えるのが正解だろう。
ちょっとおバカで、元気な“スカッシュ”なら。
「――ふふ、それじゃあたしは将来、
お金持ちで優しくて強くてカッコいい旦那さんに幸せにしてもらうわ!」
条件キツいぜお嬢ちゃん、と笑いが起きる。
これで良いのよ、スカッシュちゃんはいつだって道化師でありたいんだから。
バカでありたい、愚かでありたい。
……そう、ありたい。
「じゃ、決まりだな」
「へ?」
にっと笑うその瞳に、真剣さが混じる。
ああ、決断したのだなと悟れた。
この最終局面をどう乗り越えていくのか。
「ダーツ、アルド、お前等は南の連中を抑えてこい。
ミファラドとボイドは西、ダイルはアリュムスを手伝ってガキどもを城下から更に離せ。
割れてないアジトの受け入れ体制の強化は……
イッド、ジェイス、エドルバにワーズだ。急げよ」
「……坊っちゃん、突入編成とのバランス考えな。それじゃ戦力が偏るぞ」
ミナトの指摘が入る。
当然だろう、あまりに守りに戦力を割きすぎている。
これじゃ、まるで……
「ボス、まさか戦う気無いの?」
「……まだだ、情報が少なすぎる」
ざわつく男たちを気にせず、次々と指示を出していくボス。
……悔しかった。
“情報が少なすぎる”って、それは、つまり。
「――ボス」
「うん?」
「……2、3日くらい出るわ、変人呼び戻しといて。
多分あいつ近くにいるわよ、すぐ来るんじゃない?」
一段高くなっているそこを立ち、出口へ向かう。
微かに突き刺さる視線が痛い。
分かってる、あたしは姉さんと違う。
姉さんとボスが地位を保証してくれてるから、ここにいるだけにすぎない。
……笑いたいなら笑いなさい。
悪魔に、死神に心を売ったのだと蔑みなさい。
けれどあたしは胸を張って答えましょう。
あの人が悪魔ならば、あたしは堕天使。
あの人が死神ならば、あたしは頭を垂れましょう。
それがせめてもの償い、こんな国を作ってしまったこの血の贖罪。
あの人を闇の者だというなら貴方達は一体何なの。
あの人が命を掛けて築いた財産で生き繋いでいるのは誰。
あの人が死に物狂いでかき集めた食料を食べているのは誰。
……あの人こそ本当の天使。
神があたし達に遣わした聖者。
本当の悪魔は、貴方達だわ。
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女性
誕生日:
1994/05/10