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英雄クロニクル/サクセス鯖 女神の誓(1uxv)の主にSS置き場。

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【視点:ヤンディ】

銀剣矢の意味。
たとえこの名が従属の枷だとしても、自分はこれを誇りに思おう。
かつてはこの名を支えに生きていたのだから。

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+ + + + + + + + + +


ずっと、憧れだった。
いつの日か、この世界から抜け出して自由になるのだと幼い頃から夢に見ていた。

けれど所詮は夢。
叶うはずがないのだと、ただ鳥籠の中から外を眺めていた。
幾年が経てど、何も変わらない毎日。

一体幾度命を絶とうと思ったか。
その度に異変に気が付いた親父さんが、ただずっと傍にいてくれた。
こっちに来い。美味いもんがあるぞって。
何があったのかと聞いてくることは無かったけれど、その時間だけが暖かかった。

死神に見つかってからも気にかけてくれていたあの人は、歴史の闇に消えていった。
あれだけ出たいと願っていた鳥籠から追い出されて、
けれど外での生き方なんて知らなかった自分は自由な空を見上げることしかできなかった。

空を見上げていたら、いつの間にか雁字搦めに拘束されて闇の中。
鳥籠の日々よりも更に冷たく苦しい日々。
自由どころか、人間であることを否定され心までを殺され道具として扱われる。
日付の感覚など無くなって、死神が葬る度に主人を変えた。

何人目かなど忘れたが、最後に買われたのが霧弓だった。
魔法使いを買っては遺跡に放り込んで使い捨てる奇人。
それまでとはあまりに違う仕事に、戸惑ったことを覚えている。

……買われた道具は矢と呼ばれた。
入れば大体の道具が死んでいく、あの世界の遺跡に次々矢を放つ。故に霧弓。
ほとんどの矢は放たれたまま折れて戻ってはこない。
けれど数度生還することができたなら、固有の名を授けられた。

「――霧弓の、銀剣矢」

髪の色や瞳の色を名にされる事が多いことを知っていたから、
自分の髪や瞳は銀でないと控えめに抗議したら、笑いながら短剣を示された。
あの時のあの人は本当に機嫌が良かったのだと思う。
貴重な遺物を手に入れた直後でなければ、機嫌を損ねて折られていたかもわからない。

あの人の元にはどれだけの期間居ただろうか。
毎日のように繰り返される遺跡などの探索。
幾度も死にかけたが、まだ鳥籠に居た頃の経験が活きた。

いつしか自分より先に買われた矢は全て折れ、後に買われる矢も無くなった。

自分が折れたらどうするのかと問えば、お前は絶対に折れないと言う。
城下の伴をして果物に目を引かれれば、お前は本当にこれが好きだなと笑う。
大したものが見つからなかったと言えば、お前が無事でよかったと抱きしめられた。
――窓の外を眺めていたら、自由が欲しいかと問われたこともあった。

あの時の自分は、いらないと答えたはずだ。
その時の、なんとも言えない表情のあの人を良く覚えている。
今思えばこれ以上ないほどに気に入ってもらえていたのだろう。
他の矢は不要だと思わせるほどに。

それからしばらくして、突然自分にとっては大金を手渡された。


―― お前は、お前自身を買い戻せるほどに働いた。
   これはお前が稼いだものの一部だ。
   手放すは惜しいが、このまま老いぼれの元にいればまたお前は他人の手に渡る。
   お前が私以外の人間に使われるのは我慢ならん。
   故に、お前を世界に放つ。世界を回って宝を探せ。
   そしてそれを……1人の人間として、探検家として私に売りつけろ。  ――


呆然と、何をしていいのかわからなくなった事だけは覚えている。
この時はもう、自分で自分のことを決めることができなくなっていたから。
気が付いた時には枷は外され、餞別にと魔力を隠すマジックアイテムを渡され、城下にいた。

どこに行っていいかも分からない中でも、
道具で無くなったのなら同じ場所にいては危険だと考えるだけの頭はあった。
そうして、目的も無く歩き回って、ふと視線を上げれば追い出された鳥籠の前。
その時の自分に、そこ以外に向かえる場所など無かった。
たとえ歓迎はされないと分かってはいても。

「変人ーっ!! なぁにそんなところで黄昏てるのよ!」
「うるさいなぁ、ほっといてよ」

……あの時たまたま、再会した彼女に大金の大半を渡して逃げるようにその場を去った。
その後は今まで通り遺跡に潜っては、霧弓へと売り、おちびに稼いだ半分を渡す日々。
いつしか名も売れ、コレクターからの依頼も増えて収入も爆発的に増えていった。

「ヤンディ、紅茶の準備できたでー?」

銀剣と呼ばれなくなって、暫くがたった頃。
久々に売りつけてやろうと思って霧弓を訪ねた。

「――うん、今行く」

出迎えてくれたのは馴染みの顔だったがそこに霧弓はいなかった。
遥か昔、魔法使いに産み出された彼女はたった一言、
これで私も眠れますわと言って活動を止めた。

「むぅ、あたしが言っても聞かないのに」

残されていたのは、霧弓からの最期の指令状。
自分が作った迷宮を突破できたなら財産は全て譲ってやるなんて、あの人らしい挑戦状。
結局一度では突破できず、数度挑んでその全てを手に入れた。

「君は一々遠まわしすぎるんだよ」

霧弓の銀剣矢。その名は覚悟。
全てを失い、僅かな手札で1から勝負するという大博打。

昔の手札は銀剣矢であることだけだった。
今は、そう。

「はやくせんと冷めてまうで?」
「ごめんごめんお待たせ、ティータイムにしようか」
「姉さんの茶葉は無いから普通のよ」

共に戦う、彼等がいる。
大丈夫、きっとやっていけるさ。
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